※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 試合終了間際、“タコダンス”で相手の攻撃をかわした多胡島伸佳(早大)
多胡島は「インカレで優勝し、(相手に)研究されていたけど、自分が持っているものを出して、それを上回るようにと思っていた。欲を言えば、全試合を通して失点があったので、それを減らせるようにしたい」と、喜ぶどころか、すぐに課題を見つけるなど意識の高さを見せた。
早大の70kg級には、今年の世界選手権に出場した保坂健もいる。保坂が74kg級にエントリーし、多胡島が二冠を狙って70kg級のマットに上がった。決勝の相手の新川は、多胡島が鮮烈な大学デビューを飾った昨年のJOC杯の決勝の相手。
その時は11-5と大勝したものの、「フォールされそうになったところから巻き返して勝てた内容。負け試合だった」と悔しさが残っていた。そのため、挑戦者のような気持ちで新川にぶつかっていった。
第1ピリオドはアクティブタイムによって多胡島が1点を先制。第2ピリオド開始直後、相手に完全に足を取られるが「ディフェンスには自信がある」とうまくエスケープして無失点。その後も前に出続けて、場外ポイントと、終盤には4点タックルを決めて見せた。
■調子がいい時に出る“タコダンス”
6-1となったラスト10秒、好調の時にでる小刻みなステップ、通称“タコダンス”で相手を翻弄して試合終了のブザーが鳴った。周囲からは「出た! タコダンス!」と笑い声が漏れたが、多胡島は「みんなにふざけていると思われているけど、僕は大真面目にやっています」ときっぱり。
「足を触らせないためにはどうしたらいいかなと突き詰めたら、このステップにいきつきました」と真顔で返答。このステップが出ることが「自分の動きができて、調子がいい証拠」だそうだ。スタンダードなレスリングより、個性のあるレスリングを目指している多胡島は、「人がやらないことをやりたい」と、今後も自分の動きを研究し、突き詰めていく予定だ。
レスリングスタイルも目が離せないが、もっと気になるのは今後の階級だ。「学生二冠王者と言っても、非オリンピック階級でのこと。(東京オリンピックまで)まだ時間があるのでじっくり考えたい」と、当面は70kg級でのエントリーをにおわせた。だが、12月の全日本選手権は「74kg級の資格もある。どうするかは、コーチたちと相談して決める」と話した。
来年は大学3年生。ジュニアを卒業し、本格的にシニア(全日本)の舞台に参戦する。「学生の大会では今年と同じように成績を残し、少しずつ視点をシニアに移していきたい」とさらなる成長を誓った。