※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
インターハイの屈辱を国体で晴らした! 「長崎がんばらんば国体」の少年男子フリースタイル96kg級は、坂田龍星(埼玉・埼玉栄)が決勝で山下拓也(愛媛・八幡浜工)を10-1で下し、高校生最後の国体で初優勝を飾った。3月の全国高校選抜大会に続いて高校2つ目のタイトル。坂田は、「やっと(全国の舞台に)戻って来られました」と王者の肩書をかみしめた。
勝利が決まった直後、坂田は泣いていた。「笑顔で終わろうと思ったけど、負けたように泣いてしまった」と言ううれし泣き。春の王者として夏のインターハイで春夏連覇を目指した坂田だったが、県予選でまさかの敗退。その相手は、インターハイでMVPを獲得した石黒峻士(埼玉・花咲徳栄)だった。 優勝した坂田龍星(左)と山崎弥十朗の埼玉栄選手
そんな坂田の背中を押したのが、両親や埼玉栄の保護者らの応援団だ。「最後は笑って終わろうね」と坂田を励まし続け、国体に送り込んだ。「負けてからは、いろいろな相手を想定した練習をしてきました。低いタックルに入る選手には、しっかりと切ってバックに回り、パワーで押してくる選手には逆に力を抜き、相手がばてた時に勝負をかけるようにしました」と、試合展開のバリエーションを何パターンか持てるようになっていた。
決勝の相手の山下は長身でタックルを多用する選手。「石黒のようなタイプだったので、ちょっと弱気になってしまった」と振り返ったが、徐々に調子を上げて大差をつけて勝利した。
「台風の影響で両親は長崎に来られなかったんですけど、しっかりと伝わったと思う。今年は12月の全日本選手権にも初出場します。どこまでできるか試して、大学に進学したい」ときっぱり。悩み苦しんだ坂田が、再び輝きを取り戻した国体だった。
■山崎弥十朗は2年生でタイトル4つ獲得
84kg級に出場したユース・オリンピック金メダリストの山崎弥十朗は、決勝で内藤由良(神奈川・磯子工)をテクニカルフォールで下して大会初優勝を決め、全国高校選抜大会、JOC杯カデット、インターハイに続く今季4つ目のタイトルを手に入れた。
準決勝で足を痛めるアクシデントがある中、試合内容も圧勝した。今シーズンを振り返って「どんな時でも自分の力を出し切れたと思う。精神面も強くなった」と自己評価。「来年は全グレ(全国高校生グレコローマン選手権)も取って五冠王者目指します」と抱負を語った。