※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(撮影=矢吹建夫)
全日本大学グレコローマン選手権は、拓大が初日で「優勝3人、2位1人」の大健闘。2位以下に大きな差をつけて大学対抗得点の優勝を濃厚にした。130kg級世界選手権代表の園田新の優勝を予想した人は少なくないだろうが、66kg級の堀後雄太と85kg級の岡嶋勇也(ともに3年生)の優勝を予想した人は、そう多くはいまい。失礼な表現ではあるが、“伏兵のうれしい誤算”で優勝へ近づいた。
堀後は「すごくうれしいです」と、岡嶋も「まだ実感はないのですが、とにかくうれしい」と、初々しく初の全国優勝の感想を話した。
■インカレ3位の自信が勝利を呼び込む…堀後雄太
■堀後雄太の2014年全日本大学グレコローマン選手権成績 決 勝 ○[1-1]雨宮隆二(山梨学院大) 準決勝 ○[フォール、2:35=4-0]瀧康真(関大) 3回戦 ○[Tフォール、3:33=10-2]魚住彰吾(専大) 2回戦 ○[Tフォール、2:34=8-0]花井尊道(法大) 1回戦 BYE |
66kg級の堀後は、和歌山・和歌山北高出身の3年生。高校時代に国体ベスト8、JOC杯カデット3位などの成績を残して拓大へ。新人選手権では上位の成績を残せなかったが、今年4月のJOC杯3位に入賞し、8月の全日本学生選手権でも3位に入賞するなど、徐々に実力をつけてきた選手。 一段ずつ階段を昇り、大学王者に輝いた堀後雄太(拓大)
準決勝の相手は昨年2位の瀧康真(関大)で、決勝の相手は同じ全日本学生選手権3位ながらジュニア時代から実績を持つ雨宮隆二(山梨学院大)。「準決勝で教えてもらった技を思い切りやったら、うまくかかった。決勝でも、教えを信じてやったのがよかった」と振り返る。
技術面での問題とともに、精神面での自信のなさも、成績を残せなかった要因と振り返る。「自分に自信がなく、いつもマイナスの考えだった」と言う。全日本学生選手権で3位に入ったことで、「今回はちょっと自信を持って臨めた」とのこと。表彰式は最終日に行われるが、表彰台の一番高いところに上がる経験が自信をいっそうつけてくれそう。最後は「次は全日本選手権。どこまでできるか楽しみです」と、前を向いたコメントを話した。
■前十字じん帯断裂の負傷からはい上がる…岡嶋勇也
■岡嶋勇也の2014年全日本大学グレコローマン選手権成績 決 勝 ○[5-1]亀山晃寛(山梨学院大) 準決勝 ○[1-0]与那覇竜太(専大) 3回戦 ○[Tフォール、0:52=8-0]前盛翔(福岡大) 2回戦 ○[Tフォール、4:31=9-0]中崎強介(九州共立大) 1回戦 ○[Tフォール、1:31=9-0]大山博貴(明大) |
84kg級の岡嶋は滋賀・栗東高校出身。フリースタイルの選手で、1年生の時(2012年)の東日本学生秋季新人選手権84kg級で優勝し、昨年はJOC杯ジュニア2位で、アジア・ジュニア選手権にも出場。堀後より飛躍は早かったが、昨年夏に左ひざの前十字じん帯を切り、約半年間のブランクを経験。そこからはい上がっての優勝だ。「けがをした時は、このまま終わりかな、とも思った。でも、優勝できました」と感慨無量。 専門外のグレコローマンで殊勲を挙げた岡嶋勇也(拓大)
ヤマ場は準決勝で対戦した学生王者の与那覇竜太(専大)戦。「グラウンドの闘いになったら負けると思ったので、警告を取られないよう、前に前にと出た」という作戦があたり、1-0での勝利。決勝は、自分を含めて拓大が4階級で決勝進出を決め、堀後が勝ち、75kg級の永井凌太も負けたとはいえ、いい試合をしたので、「自分もやるしかない」という開き直りがよかったという。
グレコローマンで優勝したとはいえ、フリースタイルを捨てるつもりはなく、このあとは全日本大学選手権での優勝を目指す。