※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
ロシア遠征を終えた男子グレコローマン選抜チーム
遠征前は、今年2月に冬季オリンピックが行われたソチでの合宿と聞かされていたが、モスクワに到着し、国内線で移動したあと連れていかれたのはカバルダ・バルカル共和国。標高2000メートルの高地で、ソチとは大違いの何もない場所。山を登ったところはグルジアとの国境で、山登りのランニングをする時は迷った時のためパスポートを持参したという。
国内での高地合宿と言えば菅平合宿が思い浮かぶが、標高は約1300メートル。米国ナショナルチームの常設練習場があるコロラドスプリングズが約1700メートル。それらを上回る約2000メートルの高さでの練習というのは、日本チームは経験がない(ただし、1968年オリンピックと1978年世界選手権が行われたメキシコシティーは標高2300メートル)。
最初の2、3日は体慣らしということで練習らしい練習はなかったので、日本は独自で練習したところ、「とばしてはダメだ」と、ストップがかかったという。心拍数を計測してから本格的な練習に入るなど、単に苦しさを求めるのではなく、医科学面の裏付けをもった練習が行われていたという。
クロアチアでの世界ジュニア選手権に監督として参加した後、途中から参加した元木康年監督(自衛隊)は「息は上がるし、強い選手相手の試合形式のスパーリングがあり、きつかった。日本の方が練習量はこなしていると思うが、ロシアの1番手から3、4番手まで集まった合宿で肌を合わせたことで、身についたことは多いと思う」と振り返った 元木康年監督(自衛隊)から最後のアドバイスを受ける選手
笹本睦コーチ(日本協会専任コーチ)は、山道ランニングとグラウンド技の技術練習が多く、スパーリングの量が少なかったと感じたそうだ。この合宿の重点課題だったためだろうが、それでも試合形式のスパーリングでは「ロシア選手相手にみんなよくやっていた」と振り返り、“ロシア選手恐れるに足らず”を強調した。
3週間近い練習で一度もけがによる離脱のなかった長谷川は「(59kg級には)55kg級と60kg級の選手が集まっているので、練習相手はたっぷりいた。高地なので最初は大変だったが、ランニングなどで調整して慣らしていった。いい練習ができたと思う」と振り返る。秋はアジア大会(韓国)に出場し、世界選手権(ウズベキスタン)には出ないことを伝えていたので、「相手は手の内を隠すことなく、思い切ってぶつかってきてくれました」と言う。
遠征合宿はロンドン・オリンピックの2ヶ月前のソチ合宿以来。現在は仕事の関係もあって、その時ほどの練習は積めておらず、「どのくらいできるかな」という不安はあった。やってみると、「こんなもんか。結構いけるぞ」と感じたという。ただ、60kg級から落としてきた選手は体が大きく感じたので、パワーをつけるなどして「慣らしていく必要を感じた」と言う。