2014.08.07

【インターハイ・特集】兄弟で1年生チャンピオンに!…50kg級・乙黒拓斗(東京・帝京)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)

 9人目の1年生チャンピオン誕生! インターハイの男子50kg級は、3月の全国高校選抜大会王者の成國大志(三重・いなべ総合)が階級アップで不在。成國に変わって同55kg級王者の藤田雄大(三重・いなべ総合)が階級を下げてエントリーしたが、体調不良で棄権し、王者不在の群雄割拠の階級となった。

 その中でトーナメントを勝ち抜いたのは、JOCアカデミー所属の1年生、乙黒拓斗(東京・帝京)。決勝で、谷山拓磨(京都・京都八幡)を7-0で破ってチャンピオンに輝いた。乙黒は「緊張せずに臨めて、最初から攻めに行けたのがよかったです」とにっこり話した。

 春の王者不在とはいえ、1年生が勝ち抜くには非情に壁が高い大会だ。乙黒は「(先輩たちとの)力の差は感じていたので、相手に力を使わせないレスリングをしました」と、アンクルホールドなどを多用し、力でなく技で勝負をかけた。その作戦が功を奏し、3回戦では学校対抗戦で優勝した花咲徳栄(埼玉)の主将、齋藤僚太にも第1ピリオド、テクニカルフォールで勝った

 1年生で勝ちにこだわった理由もある。60kg級に兄の圭祐も出場しており、兄弟そろって最初で最後のインターハイだったからだ。「兄も1年生で優勝していたので、自分も勝ちたかった」との思い通り、兄弟で1年生王者に輝いた。乙黒は「アカデミーの選手は勝たないとダメなので」ときっぱり。勝利への執念をのぞかせた。

 昨年の全国中学選手権で敗れた時(4回戦)、会場で一番の歓声があがった。「アカデミーはいつもアウエーです。ショックな時もあるけど、それだけ注目されて期待されていると思っている」と、アカデミー選手ならではの試練をプラス思考で力に変えてきた。

 現在は成長期まっただ中。身長も伸び盛りのため、来年は55kg級に階級アップを見据えている。階級を上げればさらなる強敵が待ち受けているが、「チャレンジャー精神で勝てるように頑張ります」と躍進を誓った。