※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=保高幸子) 奥野春菜(三重・久居)
3試合とも無失点の圧勝優勝だった。「自分は守る選手ではないので、タックルで積極的に攻めていこうと思った」ことが失点を許さずに勝ち抜いた要因のようだが、「余裕は全然なかった」。高校生の祭典インターハイでの試合は緊張感が違った様子。
決勝は第1ピリオド、相手をニアフォールに追い込み、そのままフォールへいくかと思われたが、逃げられてしまうなど、圧勝の中にも悔しさなどもあったようだ。
幼少の頃から吉田さんが代表を務めた一志ジュニア教室でレスリングを続けてきた。目標とする選手は、言うまでもなくクラブの大先輩の吉田沙保里(現ALSOK)。2004年アテネ・オリンピックで吉田が金メダルを取った時の記憶は鮮明ではないようだが、沙保里を目標に厳しい練習に耐えてきた。
タックルを主武器としているのは、当然のことながら沙保里の影響。沙保里にタックルを教えた吉田さんから、「基本が大事」として嫌になるほど反復練習をさせられた結晶でもある。吉田さんは「厳しい中にも、あたたかさがあった。やっていることを、きちんと見ていくださる方でした」とこと。1年生チャンピオンに輝いた姿を、微笑みながら見ていることだろう。 決勝で闘う奥野
2011年の全国中学生選手権では、3回戦で首からマットに落ち、救急車で病院に運ばれるアクシデントに見舞われた。1年間もマットを離れることになり、復帰の見込み時期を尋ねる父・竜司さんが医師から怒られたことも。
そんな苦難を乗り越え、焦らずにけがを完治させての中学二冠制覇、そして1年生インターハイ・チャンピオン。この先には2020年東京オリンピックがあることは言うまでもないが、「今やるべきことを、ひとつずつやっていけばいい」と、ここでも焦らず、一歩一歩実力をつけていく予定だ。