※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=保高幸子) 加賀田葵夏(東京・文化学園大杉並)
中学時代に3年連続二冠(全国中学生選手権、全国中学生選抜選手権)を制した加賀田にとって、昨年の初戦敗退というのは、やはり心にしこりが残っていたようだ。「去年は1回戦負けだった。今年は初戦でまず勝って、そのまま決勝まで来て優勝することができました。うれしい」と、まずは初戦突破を目標としていたかのようなコメント。準決勝も快勝して決勝へ進んだ。
しかし、決勝の岡本佳子(佐賀・鳥栖工)は相手に思わぬ苦戦を強いられた。2-0とポイントを先行しながら、アンクルホールドなどで2-4と逆転され、追う展開になってしまった。しかし、第2ピリオドのラスト45秒、4点となるタックルで再逆転。地力を発揮して優勝を引き寄せた。
岡本は中学時代の2010年に二冠を制覇し、昨年のアジア・カデット選手権で優勝と国際舞台で通用する実力を持った選手。加賀田は昨年のジュニアクイーンズカップ決勝で対戦してフォール勝ちしているが、油断ならない相手だ。「試合前からぎりぎり(の試合に)になると思っていました。実際にポイントをリードされてみると、焦りました」と言う。 決勝で闘う加賀田
■部員が少ないハンディをプラスに変える
幼稚園時代から一緒にやってきた同い年の成國大志(三重・いなべ総合学園)が前日の試合で左手の甲を骨折。この日の初戦で敗れて2連覇ならなかった。勝負の世界の厳しさを見せつけられた形だが、「あのけがでも出るというのは、気持ちがすごいと思いますね」。ひと足先に高校王者となっていた元チームメートの闘志からエネルギーをもらった面もあるようだ。
同高は部員2人で、いつもは中学生1人のほか、キッズとともに練習しており、愛知・至学館や東京・安部学院のように同世代の選手多人数で練習しているわけではない。そのハンディは自身も感じていて、「この練習でいいのかな?」と不安になる時もあるという。しかし、その気持ちが、かえって「もっとやらなければ駄目だ」という気持ちが強くなり、「自分を追い込む分はいいかもしれません」ときっぱり。
今後、2020年東京オリンピックへ向けてシニアでは48kg級でやっていくことを決めている。そのためには、世界チャンピオンの登坂絵莉(至学館大)という大きな壁がある。「まだかないませんが、追い越さなければ先はありません。世界チャンピオが国内にいるというのは、とてもいいことだと思います。越えられるように頑張りたい」と力強く話した。
昨年は8月前半にインターハイがあり、後半に世界カデット選手権。緊張が続いた真夏をおくった。今年はその2つが早々と終了。間延びしかねない夏休みになるが、「この時期に、次へ向けてしっかりと体をつくっていきたい」。前進する選手にとっては、休みが続く夏休みはない。