※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
国際レスリング連盟(FILA)のネナド・ラロビッチ会長(セルビア=右写真)は、今月4~6日にギリシャ・カテリニで行われた世界ビーチ選手権で、地元のメディアのインタビューに答え、今後の数多くのレスリングの改革案を激白。2024年オリンピックの実施競技が決まる2017年の国際オリンピック委員会(IOC)総会での中核競技への復帰を目指し(注=2024年大会のレスリング実施は決定済み)、レスリングへの思いを熱く語った。
同会長は「10年前と今とでは同じではない。5年前と今もだ。時代はとても速く変化しており、時代が変わる前に変化に対応していかなければならない」と、暗に以前のFILAが時代に乗っていなかったことを指摘。IOCのトーマス・バッハ会長(ドイツ)の目指すオリンピック改革に合わせ、レスリングも変えていきたいとしている。
内容的には私案の部分もあるものの、同会長が今年9月のFILA総会(ウズベキスタン)で会長に再任されるのは確実で、改革の多くが提案されるものと思われる。
改革を考えている主な事象は下記の通り。
《FILAの名称変更》
新名称を「UWW(ユナイテッド・ワールド・レスリング)」に変更することはFILA理事会で決定済み。総会で承認されれば変更される。フランスの頭文字をとった「FILA」にはレスリング(wrestling)という言葉が含まれていないことが理由。スポーツ界の主流の言葉は、以前はフランス語だったが、現在は英語。ラロビッチ会長は「だれもが、何の連盟か分かるようにしたい」と話している。
《レスリングの世界への普及》
昨年のオリンピック競技からの除外問題で、レスリングの問題点のひとつとして指摘されたのは、オリンピックのメダル獲得地域に偏りがあり、IOCの主流を占める西欧ではドイツくらいしかメダル争いにからめる国がないこと。男子では東欧、女子ではアジアと東欧が主流を占める状況を改善し、世界への普及を進める。
ラロビッチ会長は、今年の欧州選手権の男子では、ドイツのほか、オーストリア、英国、アイルランドがメダル争いに絡んだことを指摘。この流れを加速させるとともに、東南アジアやオセアニアの国も世界のメダル争いに加われるよう普及に力を入れるとしている。
《カデットはグラウンド戦を廃止》
カデットはスタンドのみでの闘いとする。2つの理由による。(1)16~17歳の選手では、グラウンドで相手をコントロールし、リフトするには十分な発達がない。(2)グラウンド戦があるためスタンドの技術習得の機会が減少しており、スタンドの技術を失っている。レスリングを大きく変えることになるが、多くのスタンド技術が身につく。
(注)スタンドでの技術展開の少ないグレコローマンのことを言っているものと思われる。いずれにせよ、これまでFILAの正式な議論として出てきたことはなく、会長の完全な私案であると思われる。
《ホームページの充実》
9月のFILA総会で名称変更が認められた後、新しいロゴを使用して新しいホームページを立ち上げる。選手、指導者、ファン、報道にとって役立つものとし、各国協会と協力し、その国の言語のページもスタートさせたい意向。翻訳のために必要な経費をねん出するためスポンサーを探すという。メディアやソーシャルメディアの拡充を目指しており、2012年に1万3000人だったフォロワー(ツイッター?)は、現在、50万人近くになっている。(注=2012年に数千人だったフェイスブックの「いいね」は、現在18万人になっている)
《ビーチ・レスリングの将来について》
古代のレスリングを模した面白い種目だが、ビーチバレーのようにオリンピック種目となるには問題点が多い。20秒足らずで勝負が決まる今のルールでは、持っている技術を十分に発揮することができない。これを改善しなければならない。