※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 決勝で闘う堀内優(自衛隊)
京都・網野高3年生だった2008年の全日本選手権で彗星のごとく優勝し、一気に注目が集まった。期待通りに2009年、2010年と国内で敵なしの強さを誇ったが、度重なる右肩の脱きゅうによって手術に踏み切り、2010年世界選手権を最後に実戦から遠のいていた。
それも完治に近い。「もう右肩は気にしてはいません。ほかの小さなけがや精神的な問題がたくさんあります。それがなくなれば、もっとよくなると思う」と、長年悩まされた脱きゅうから完全復帰したことをアピールした。
昨年のこの大会は2位で、秋の全日本女子オープン選手権で優勝し、3年ぶりに全日本選手権に出場した。今年6月の全日本選抜選手権にも出場したが、初戦でアジア選手権代表の菅原ひかり(至学館大)に敗れた。「まだまだ弱いです」と謙そんしながらも、今大会で優勝し、復帰の下地は固めつつある。
今大会、堀内は片足タックルをていねいに攻める姿勢を見せた。今までの「勢いや力で技をかけていた」ことを反省し、技の理解度を上げて試合を展開した。今まで苦手だった、がぶりからの攻撃も決めることができて、成長の手ごたえをつかんだようだ。 2010年世界選手権決勝、あと一歩で金メダルを逃した
課題も浮き彫りになった。準決勝の関下沙希(自衛隊)との対戦では、グラウンドからのローリングを何度も決めたが、得点版を見ると相手にも4点が入っていた。「自分がブリッジしないで回していたので、取られました。4回のローリングで計4点入ってしまいました。その失点が怖くて、決勝ではグラウンドを1度も返せなかったのです」と、審判の判断と自分の感覚のずれに焦ってしまったことを吐露した。
だが、今年の12月に4年ぶりの全日本女王に返り咲くために、確実に復活への軌道に乗ったと言っていい。今大会を制覇したことで、秋には2010年の世界選手権以来、約4年ぶりに海外遠征に行けることが決まった。「4年ぶり…。オリンピック状態ですね」と苦笑した堀内だったが、すぐに真剣なまなざしに戻った。
「リオデジャネイロ・オリンピックに出るためにやっています。今年12月の全日本選手権から選考に入ると思うので、階級は(オリンピック階級の)53kg級か58kg級か考え中ですが、オリンピックを目指すため、勝負をかけていかなければなりません」と、吉田沙保里(53kg級=ALSOK)、または伊調馨(58kg級=ALSOK)に挑む覚悟を見せた。