2014.06.19

【全日本選抜選手権・特集】オリンピアンの意地を見せる…男子グレコローマン66kg級・松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

《決勝VTR》 / 《プレーオフVTR》

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)

 全日本選抜選手権は初日、男子で長谷川恒平(グレコローマン59kg級)らロンドン・オリンピックの代表が次々と勝利を手にした。最終日、男子グレコローマン66kg級の松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)が続いた。昨年の全日本選手権決勝で敗れた音泉秀幸(ALSOK)に決勝で雪辱を果たすと、プレーオフでも勝利してアジア大会代表の座を確実なものとした。

 全日本選手権で敗れた後、「モチベーションを上げづらかった。競技生活を終えるのか、指導を中心にしながら自分も続けていくのか、考えていきます」と話した。ロンドン・オリンピックが自分にとって競技の集大成だったからだ。

 だが、状況は変わっていく。群馬ヤクルト販売で仕事を続けながら、2013年春から1週間に一度、群馬大学・大学院の医学系研究科で器官代謝制御学も学び始めた。内容については割愛するが、松本自身も、アスリートとして血液採血などに率先して協力することで、研究に貢献しているという。

 日常の勤務だけではない、こういった社会経験や、昨年の東京オリンピック招致活動という経験が松本を成長させていた。昨年12月の全日本選手権が終わり、自分の競技生活に真剣に向き合った。

 確かにロンドン・オリンピックが競技の集大成だった。だが、レスリングに向き合うことを考えているうちに、「競技だけをしていていいのだろうか?」という考えに変わっていったのである。「リオデジャネイロ・オリンピックを目指す」という明言は避けたが、「自分にオリンピック代表の座を奪われてたまるか、という気持ちを後輩たちが強く思ってくれれば、この階級も日本のレスリング界も発展していく」と語った。

 ロンドン・オリンピック代表メンバーの活躍が目立った今回の全日本選抜選手権。松本は勤務先や大学院の先生方が理解してくれているおかげで、練習の時間もとれる。先駆者たちは、まだまだ若手の壁となっていく。