2014.05.20

【特集】4選手が安定! 盤石の布陣でリーグ戦連覇を目指す山梨学院大

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 東日本学生レスリング界最大のイベント、東日本学生リーグ戦は5月27日(火)~29日(木)、東京・駒沢体育館で行われる。今年からリーグ戦のシステムが変わり、予備リーグの1位同士、2位同士…で決勝リーグが行われる。1位が集まるリーグは、強豪相手に3連戦を勝ち抜く必要があり、昨年まで以上に体力や層の厚さが必要となってくる。

 優勝候補の一番手に位置するのは、昨年の覇者・山梨学院大だろう。昨年の主力メンバーから66kg級が抜けるだけで、125kg級に学生界無敵のオレッグ・ボルチンを控えているのは頼もしい限り。

 山梨学院大の連覇の可能性をさぐった。


《大会要項》《対戦表・試合日程》
※リーグ戦は全試合、インターネット生中継される予定です


2年連続5度目の優勝を目指す山梨学院大チーム

 連覇を目指す山梨学院大は、軽量級と重量級に安定したポイントゲッターを抱える。57kg級・の高橋侑希(3年)、61kg級の鴨居正和(4年=主将)、86kg級の亀山晃寛(4年)、125kg級のオレッグ・ボルチン(2年)4選手。いずれも昨年の全日本学生選手権で決勝進出を果たした選手で(鴨居とボルチンは優勝、高橋と亀山は4年生に敗れて2位)、現段階では“学生ランキング1位”と呼べる4人だ。

 インターハイ3連覇を達成して山梨学院大に進んだ高橋は、昨年までは森下史崇(日体大=現ぼてぢゅう)の壁があって学生タイトルの独占というわけにはいかなかったが、2012年に1年生で全日本大学選手権を制し、昨年も国体で勝つなど実力は十分。昨年のリーグ戦は、森下戦を含めて6戦全勝をマークし、“先鋒”としては最高の戦力。森下の抜けた今年は、よりすばらしい強さでチームの流れをつくりそう。

■86kg級までに3勝を挙げれば、必ず勝てる!

 鴨居とボルチンは昨年の学生二冠王者(全日本学生選手権、全日本大学選手権)であり、今年も学生界では無敵の存在となることが予想される。ボルチンが最後に控えているのは、出場する選手にとって大きな“精神安定剤”だ。

 リーグ戦は7階級(57・61・65・70・74・86・120kg級)。ボルチンに回るまでに3勝目を挙げていればいいわけで、仮に65kg級を落としたとしても、70kg級での起用が予想される新人の木下貴輪(鹿児島・鹿屋中央高卒)が3勝目の大役を果たしてくれそう。

チームを支える選手。左からボルチン、鴨居、高橋、木下(亀山は授業で不在)

 66kg級で高校三冠(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)を制し、進学後最初の大会となったJOC杯ジュニア選手権では74kg級で2位の実力見せた。中間の70kg級なら、すでに学生トップ級の実力を持っていることが考えられ、ポイントゲッターとしての活躍が期待される。

 もっとも、早大の保坂健(昨年の66kg級学生二冠王者)など、勝つには厳しそうな壁もある。その場合は、86kg級に出場する亀山の腕の見せどころだ。昨年終盤は負傷で戦列を離れたが、今年は学生王者となる力を持っている選手。亀山までに3勝を挙げ、ボルチンにつないでチームの勝利を決めるのが連覇へ向けての“方程式”。

■学生王者が5人いても、勝てないこともあるのがリーグ戦

 高田裕司監督は「自分も選手も連覇へ向けて燃えている。去年のメンバーがほとんど残っているのは強み。リーグ戦というのは、独特の雰囲気があり、それに飲み込まれてしまう場合もある。経験のある選手が有利」と期待する。

 昨年の全日本学生選手権の決勝進出選手が4人残っているのは「普通に考えれば、十分な戦力」と断言する。どの大学にも強豪はいて、リーグ戦特有のムードにやられる場合もあるので、「決勝リーグは全試合4-3になるかもしれない」と警戒するが、木下を入れて5選手のうち2つを落とすことはないと見ている。

125kg級のボルチンともスパーリングをやる小幡コーチ

 もうひとつ、山梨学院大の好条件として挙げるのが、過酷な減量が必要な選手がいないこと。「何人も減量するようになると、道場のムードが悪くなってしまうもの。今年はそれがなく、いいムードでリーグ戦に臨めると思う」と言う。

 2012年の全日本大学選手権の大学対抗得点で優勝して以来、山梨学院大の飛躍を支えているのは小幡邦彦コーチ(2004年アテネ・オリンピック74kg級代表=山梨学院大職)の存在。練習の指揮は実質的に小幡コーチがとっており、どの階級の選手ともスパーリングができる強みを発揮してチームを育ててきた。

 小幡コーチは「どの大学もコマがいる。山梨学院大が有利という声も聞くけど、気にせずチャレンジャーとして勝ちにいきたい」と言う。軽量2階級と重量2階級の安定さを認める一方、自身が1年生の時(1999年)のリーグ戦の“悪夢”が脳裏から離れない。

 この年は強豪がそろっており、全日本学生選手権で8階級中5選手(足立浩二、山本徳郁、小幡、藤田尚志、小平清貴)が優勝する好成績を残したが、これだけの戦力がそろっていたにもかかわらず、リーグ戦では日体大の後塵を拝していた。「リーグ戦ではチームが一丸となって闘うことが必要」と、試合に出ない選手を含めての団結を口にし、「自信を持つことはいいが、天狗になってはならない」と、挑戦者の気持ちを強調した。

昨年のリーグ戦で胴上げされる下田正二郎部長。再現なるか

「チームとして勝ちに行きます」…鴨井正和主将

 鴨井主将は「去年の結果を忘れてプレッシャーを持たず、挑戦者として臨みたい。プレッシャーを感じたら動きが悪くなる。最後(ボルチン)に回したら絶対に勝てるので、足を引っ張らないようにしたい」と控えめに話す。自身と高橋とで必ず2勝を予想されているという問いに、「必ず、なんてありえませんよ」と苦笑し、「2人だけじゃない。チームとして勝ちに行きます」と、一致団結を強調した、

 先陣を切る高橋は「周りからの期待にこたえられるように、いつも以上に団結したい。トップバッターの役目をしっかり果たしたい」と話す。全勝を期待されているプレッシャーもあるそうだが、「いつも通りの力を発揮するだけです。結果だけではなく、内容もよくして次につなげたい」と言う。

 今回のリーグ戦で対戦があるかどうか分からないが、日体大の57kg級にスーパールーキーの樋口黎(茨城。霞ヶ浦高卒)が入り、学生界、さらには全日本でのライバルになる可能性がある。「まだ闘ったことはありません。最初に負けてしまうと今後に影響するので、絶対に勝ちます」ときっぱり。全日本のトップを目指す選手のプライドを見せた。

先陣を切る57kg級の高橋侑希

チームを支える61kg級の鴨居正和主将

70kg級出場が予想される新人の木下貴輪

頼もしい守護神、オレッグ・ボルチン