※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
1年ぶりのマットも、無念の初戦敗退の元全日本選抜王者
拓大時代に学生王者へ。全日本選抜選手権の大舞台で加藤賢三(自衛隊)と北京五輪代表を争うトップ選手だったが、大学卒業後はプロレスへ転向した。
「大学時代から両膝の前十字じん帯を損傷していた」と、両膝に爆弾を抱えていながら、うまくごまかしながらレスリングを続けていた。「当時、すでに走ることができなくなっていて、大学卒業後、医者に『このままだと歩けなくなるよ』という忠告を受けたんです」と、当時108kgほどあった体重を、70kg代に減量を決意。プロレスは引退し、介護系の仕事について1年半ほど経った。
30kgに及ぶ減量を行ったため、外見は拓大時代の面影はない。しかし、そのおかげでひざの具合はかなりよくなった。走ることもできるようになった体を再び手に入れた山口が、抱いたのは、「また、レスリングやりたい」という気持ちだった。
「大学でレスリングをやり切った感じがあったんですが、大会に来ると先輩、後輩に会えるし、自分らしくレスリングができる。仕事が最優先なので、普段はレスリングの練習はしていません。今回も1年ぶりにぶっつけ本番でやりました」。
優勝して全日本選手権の出場権利を手に入れても、仕事の都合で出場は見送るつもりだったようで、今後も仕事が最優先。レスリングを定期的に練習するのが難しそうだが、「楽しく、また出たい」と、来年以降も社会人大会の出場に意欲を示していた。