※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
優勝したいなべ総合学園の3選手。左から藤波、藤田、成國。
今大会は学校対抗戦での優勝を見据えていた。だが、3回戦で昨年インターハイ決勝の相手、霞ヶ浦(茨城)と激突し、55kg級の藤田が敗れたことが響いて3-4で黒星。上位進出はならなかった。
■三者三様の試練を乗り越えての栄冠
インターハイでは霞ヶ浦と120kg級まで勝負をもちこんでの敗退だった。今大会、いなべ総合学園は84、120kg級の重量2階級に選手をエントリーできず、5人での闘い。フルエントリーしてきた霞ヶ浦に勝つことは厳しい状況ではあった。
それでも、いなべ総合学園のメンバー全員が本気で団体優勝を狙っていただけに、痛恨の黒星を喫した藤田は「自分のレスリングができなかった。自信も失ってしまった」と、ショックが個人戦に影響してしまうような落ち込みようだった。
藤波俊一監督の「切り替えていけ」という一言で、なんとか立ち直った。55kg級は昨年50kg級王者の長谷川敏裕(東京・自由ケ丘学園)や関東王者の吉村拓海(埼玉・埼玉栄)など強者ぞろい。めまぐるしいシーソーゲームが展開されたが、その激戦を制して初の全国王者に輝いた。
2連覇達成の藤波勇飛
3選手の中で最も薄氷の勝利だったのが、50kg級の成國だ。初戦から決勝まで何度もフォール体勢に持ち込まれた場面が見られ、まさに“なんとか勝った”という優勝だった。「小学生から今までで、一番悔しい内容」と絞り出すようにコメント。絶不調の理由に「体重の問題だと思う」と、12kgの減量を挙げた。
昨年の東京国体は問題なかった体重調整が、そのあとから厳しくなった。今では、身長も55kg級の藤田を超えている。12kgの減量後に体重を戻し過ぎてしまい、「足が動かなくて、自分にイライラして、空回りして、負の連鎖にはまった」と反省の言葉を並べた。
その中でも全国の頂点に立てたのは、「勝負強さを備えていたから」と大物らしさを見せた。チーム事情もあるだけに、夏に向けて階級をどうするのかが、今後の課題だ。
4月から入部してくる新入生も、中軽量級の選手ばかりで、今季はフルエントリーができない可能性が高い。だが、V2の藤波は、「全国制覇めざしていきます」と“今年こそ”悲願達成を誓った。