2014.03.29

【全国高校選抜大会・特集】神がかりの逆転優勝! 霞ヶ浦が20度目の優勝を決める

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=池田安佑美)

 スコア0-9からの逆転フォール! 大逆転劇で流れを変えての優勝だ! 全国高校選抜大会の学校対抗戦は、昨年王者で関東1位の霞ヶ浦(茨城)が激闘を繰り広げた末、決勝で関東2位の館林(群馬)を4-3で破って優勝。通算20回目の春の王者に輝いた。

 決勝の館林戦は、66kg級が終わった時点で1勝3敗と追い込まれた。さらに、74kg級の奥田海人主将がスコア0-9とされ、絶体絶命のピンチ。しかし、ここから逆転のフォール勝ち。これで息を吹き返した。

■決勝戦の試合結果

階級 霞ヶ浦 試合結果 館   林
50 岡迫 大誠   5-8 寺田 有輝
55 小林 大樹 F、4:19(11-2)   萩本 龍
60 大山 允長   TF、3:20(0-11) 佐々木 拓海
66 井筒 諒   1-6 木村 優太
74 奥田 海人 F、4:35(4-9)   齋藤 隼佑
84 石澤 誠悠 9-8   田口 拓海
120 冨栄 雅秀 F、1:15(4-1)   吉澤 瑠依

 奥田は「0-9と追い込まれたとき、セコンドを見たら、みんなが頼むぞという顔をしていた。自分には仲間がいるんだな、と思って、もう一度頑張ろうと思った」と振り返り、チームメートの存在で気持ちを切り替えての勝利だった。

そのあと、84kg級の石澤誠悠と120kg級の冨栄雅秀が勝っての逆転勝利。入江和久コーチは「自分には理解できない力が働きました。伝統の力としか言いようがない。奥田はこれまで、点差が開くと気持ちが切れてしまっていたが、今回は最後までちゃんとやってくれた」と、目を丸くしながら生徒たちを褒め称えた。

■ポイントゲッターが負けても、新しい力が勝つ! 総合力でつかんだV20

 今大会は同ブロックに、昨年のインターハイ2位のいなべ総合(三重)、花咲徳栄(埼玉)、飛龍(静岡)など強豪校が集まり、厳しい闘いが予想された。実際に初戦(2回戦)以外は全部4-3と薄氷を踏む勝利だった。

 3回戦で昨年インターハイ決勝で対戦したいなべ総合と激突する組み合わせ。いなべは3年生が抜けて重量級2階級が不在。2勝すれば勝利という有利な状況ではあったが、霞ヶ浦の“台所事情”も非常に苦しかった

 入江コーチは「私も含めてインフルエンザでダウンしたり、けがで離脱したりと万全な状態ではなかった」と、苦戦を覚悟で試合に臨んでいたことを明らかにした。軽量級の柱である55kg級の小林大樹が、準々決勝の花咲徳栄戦でフォール負けするなど、主力が負ける時もあった。入江コーチは、「ポイントゲッターが負けたけど、石澤など新しい力が勝ってくれた」と振り返った。

石澤は団体戦負けなし。しかも3敗と追い込まれるなど勝負がかかった中、花咲徳栄、飛龍、館林でいずれも勝利したのが大きかった。石澤は「相手はみんな、ものすごい選手ばかりでしたが、いつも通りの試合ができてうれしい。いつもは下がってしまったり、組み手ができずタックルに入れなかったりしたが、今日は練習通りにできました」と、神がかった試合を展開した。

 準決勝の飛龍戦は、石澤が勝って4勝目を挙げた瞬間、セコンドの大澤友博監督が思わずマットに駆け上がってしまうほどの劇的勝利。石澤は「大澤先生には『ありがとう、よくやった』と言われました」と笑顔を見せた。石澤は個人戦の出場資格を持っていないため、団体戦のみの出場となる。「個人戦がない分、全力を出し切れて完全燃焼できた」と満足げに話し、「夏のインターハイは団体と個人戦も優勝したいです」と飛躍を誓った。

 大台となる20回目の優勝は、総合力でつかみ取った劇的な優勝だった。奥田主将は「夏のインターハイも連覇したい」と年間通じて王者死守を宣言していた。