2014.03.28

メダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業報告(6)…第2回男子カデット・ジュニアMPAキャンプ

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

JWFメダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業
プロジェクトマネジャー  清水聖志人


2011年に制定した「スポーツ基本法」は、我が国におけるスポーツの施策策定および実施を国が責任を持って行うことを明確に示した。それを受けて2013年に策定された「スポーツ基本計画」に則り、文部科学省は新たな事業を実施している。

 その中の一つが、独立行政法人日本スポーツ振興センターが委託を受け、本協会が受託している「メダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業」である。本事業は、発掘されたアスリートが代表チームに上がっていく道筋(パフォーマンスパスウェイ)を構築するとともに、各強化段階にあるアスリートを次段階へと引き上げるための強化・育成活動を通してシステムを構築する事業である。

 10月25日(金)~27日(日)の期間、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターにおいてメダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業(以下、MPA)の一環にて、第二回男子カデット・ジュニアMPAキャンプを実施した。今回のキャンプでは日本レスリング界の将来を担うカデット世代(U-17)31名、ジュニア世代(U-20)18名の有望選手、計48名が参加した。第一回は6月19日(水)~21日(金)の日程にて実施されており、本キャンプは今年度二回目の実施となる。

 レスリングのMPA事業は「インテリジェントレスラーの育成」をコンセプトとしており、全国のU-12世代、U-15世代、カデット世代、ジュニア世代から優秀なタレントを発掘し、国内育成プログラム(MPAキャンプ)によって育成を行う。MPAキャンプに参加した中で、特に優秀なタレントには海外育成拠点での実践機会を提供する。また、高度レベルの競技活動を通して得た経験や知識を基に、日本のリーダーとなれるアスリートの育成を目指すため、「教育プログラム」に注力しているのが特徴である。今回キャンプにおいては、「目標設定とそのプロセス」と「目標達成までのプランを考える」の2つの教育プログラムが展開された。

 両プログラムは、「目標設定」の重要性や「目標達成」に求められるプランやプロセスについて、ガイダンスカウンセリングやグループワーク形式で展開された。「目標設定」は、レスリング競技にのみ適用されるのではなく、キャリア形成においても非常に重要なスキルのため、レスリングを通して目標設定し、実行、評価、改善というプロセスを学んでいることを意識してほしいと担当講師より説明がなされた。

 マット上におけるトレーニングにおいては、今年度のアジアカデット選手権大会、世界カデット選手権大会、アジアジュニア選手権大会、世界ジュニア選手権大会における結果と内容を分析し、この世代の技術的課題について徹底した技術指導を行った。フリースタイルにおいては、主にアタックまでの展開、ポイント獲得までの処理、アンクルホールドの応用を指導した。

グレコローマンスタイルにおいては、差しからの展開、胴タックル、投げ技、リフト技への対応(ディフェンス)を指導した。先述した教育プログラムにおいて、選手が常に自ら考え質の高い行動をとる為のトレーニングを行っているが、マット上の実践においても、それぞれのコーチが、選手に質問を投げかけながら「考えさせる」コーチングを展開した。

 なお、ナショナルチームが行っている内容と同様の形態測定、フィットネス測定を実施し、キャンプ最終日に測定データのフィードバック及び、ナショナルチームやジュニア代表データとの比較を基にフィットネスレベル向上に向けたカウンセリングを実施した。

 MPAキャンプは、優れた才能を持ったアスリートに対して、最適な機会をパッケージ化された育成プログラムとして提供している。今回実施された、トレーニングにおいては、ナショナルチームも指導するコーチらが担当したことで、年代に応じた高品質のコーチングを提供することができた。

 教育プログラムにおいては、レスリング競技のオリンピアンやスポーツ心理学者より、インタラクティブなプログラムを展開いただき、参加選手たちの評価も高かった。

 長期的な視点に立った強化・育成は、国際競技力向上のためには不可欠な施策であり、本事業を充実させることが肝要となる。

 本事業は、オリンピック競技大会において永続的にメダルを獲得できる強化・育成システムの構築を目指すものであり、文部科学省及び独立行政法人日本スポーツ振興センターより事業の成果報告が求められる。このことから、本協会に関わる全ての関係者が方向性を共有し、事業の推進に努める必要がある。


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教育プログラムの様子①

教育プログラムの様子②

島本好平先生(兵庫教育大学:スポーツ心理学者)による教育プログラム

峯村亮コーチ(神奈川大学職)によるグレコローマンスタイル技術指導

伊藤広道コーチ(自衛隊)によるグレコローマンスタイル技術指導

小幡邦彦コーチ(山梨学院大学職)によるフリースタイル技術指導