※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
未定だったアジア選手権の2つの枠をめぐる闘いは、早大の2選手が勝ち、ともに初の日本代表権を獲得した。早大からはグレコローマン130kg級で前川勝利の代表が内定しており、トリオでアジア選手権へ臨むことになった。
■2014年度は1ヶ月の1度の大会出場となりそうな保坂健
8選手が出場した男子フリースタイル70kg級を制したのは、66kg級の学生二冠王者(全日本学生選手権、全日本大学選手)の保坂健。タックルを武器に、時にグラウンド技をまじえながら3試合を勝ち抜いた。
「うれしいです。勝ちにいきましたがん、これほど思い通りに勝てるとは思いませんでした」。3試合とも失点があり、いずれも100点満点とは言い難いとのことだが、「ポイントを取られた以上に取ったということは、攻撃力がついたことなので、まあよかったです」と言う。
3試合を勝ち抜いた保坂健
階級区分が変わり、オリンピックを目指すには65kg級か74kg級かの選択を迫られることになった。しかし、オリンピック階級ではないが、うまい具合に70kg級ができ、「世界で闘えるチャンス」として参加した。まず70kg級で闘い、世界でどのくらい通用するかを感じ、それからオリンピックに向けての階級を決めるという。
ただ、66kg級の時にも9kgくらいの減量があったので、そこからさらに1kg下げるのはきつい。将来は74kg級で闘う可能性が高そうだが、「まず70kg級で全力を尽くします。東京オリンピックも目指していますから」と、階級を上げるにしても順序をふんで焦らずに挑む腹積もりだ。
この勝利で来週に米国で行われるワールドカップの代表も決り、12日に渡米する。4月にアジア選手権があり、7月の世界学生選手権(ハンガリー)の代表も内定済み。その間には東日本学生リーグ戦と全日本選抜選手権があり、8月には全日本学生選手権。全日本選抜選手権で勝てば、9月には世界選手権(ウズベキスタン)と毎月大会に出場することになりそう。
「チャンスがあれば、生かしたい。試合数が多いということは、それだけチャンスも増えるということ。辛いでしょうけど、与えられたチャンスを活用します」と、真正面から受け止める覚悟。昨年の森下史崇(55kg級)が1ヶ月に1度ペースで大会出場を果たし、それで急成長したことを知っており、「そういうふうになれればいいと思います」と話した。
■肉体改造に成功し、飛躍した大坂昂
ワンマッチでのプレーオフに勝った男子グレコローマン98kg級の大坂昂。昨年の全日本学生選手権と国体で負けた米平安寛(日体大)相手に、コーションで取ったチャンスにローリングを2度決めて勝利につなげた。
2連敗した相手だが、10月の全日本大学グレコローマン選手権と国体で勝ち、苦手意識はなかったようだ。プレーオフが決まってから、「どうやったら勝てるだろうか、と研究して臨んだ」という一戦。「最後はばててしまいましたが、研究とトレーニングのおかげで勝てたと思います」と言う。
トレーニングとは、昨秋から同期の学生トレーナーのアドバイスを受けており、肉体改造に取り組んできたこと。「体が小さいので、まず筋力アップのトレーニングです。肉体の強さが上がれば、おのずとレスリングの試合につながると思い、必死に取り組んできました」。96kgくらいだった体重は、いまは100kgを超えている。
4年生でクラブ活動を“引退”すると、練習に甘えが出てしまうのはよくある。大坂もそんなふうになりかけたが、トレーナーがきちんと指導してくれ、今回の機会を得ることができ、この冬はモチベーションを高く持って練習できたようだ。
学生最後の年にタイトルに恵まれなかったが、「全然気にしていません。強くなるための試練だったと思っています。負けがあったから、この勝利があります」。今年の飛躍を誓った。