※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 全日本選手権での姿も見納め? 指導に回る斎川哲克(両毛ヤクルト販売)
日本人が活躍しにくいと言われる重量級で、昨年のロンドン・オリンピックに出場し、今年は世界選手権で5位と飛躍した。来年の世界選手権(ウズベキスタン)や、2016年リオデジャネイロ・オリンピックでは悲願のメダルが十分に期待できるまでに成長した。
だが、周囲が賞賛の声を上げる一方で、斎川は選手活動に区切りをつけ、次のステップの準備をしていた。「今年の世界選手権は集大成と考えていました。勝っても負けても、最後という気持ちで練習を積んでいた」と、“プロ選手”としてラストシーズンで臨んでいたことを明らかにした。
飛躍に、周囲からは現役続行の声が上がったが、「(惜しいところで)負けて悔しいでしょう、じゃぁ次またやったらいいのでは? という気持ちはない」ときっぱり。もともと「日体大には教員の免許を取るために進学し、たまたまロンドン・オリンピックを目指したから、現役が長引いただけ」と、いずれは地元に帰って教師になることを描いていた。 ローリングを中心に決勝も圧勝した
高校教員で世界やオリンピックで活躍した前例は多く、斎川にも変わりなく現役を続けてほしいが、来年の全日本合宿参加などについては、「一人でレスリングをやってきたわけではないので、(代表入りに関しては)先生たちと相談してから」と言うにとどめた。
目標については、「2022年に栃木国体があるので、それに向けて強化をしていきたい」と、すでに後進の指導について真剣に取り組んでいる。それもそのはず、栃木県は、近隣の茨城県、群馬県、埼玉県に比べると高校のレベルは高くはない。
茨城県には霞ヶ浦高、埼玉県には花咲徳栄高、埼玉栄高といずれも全国王者を輩出している高校がある横で、全国チャンピオンは久しい状況だ。9年後と言えども、今から強化に着手しなければならない。
栃木国体時に、斎川は36歳になる。現役としてマットに上がることは否定した。だが、「僕を見て『オリンピックを目指したい』と言ってくれたら、うれしい」と、自身が足利工高時代の恩師の長島偉之監督(1984年ロサンゼルス・オリンピック銀メダル)を見て強くなりたいと思ったように、高校生たちに夢を与える教師になることを誓った。