2013.11.21

【東日本学生秋季新人選手権・特集】私学の雄、慶大から2選手が優勝…フリースタイルB

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

55kg級優勝の石橋拓樹(左)と60kg級優勝の小澤健斗

 東日本学生秋季新人戦のフリースタイルB(入学後にレスリングを始めた選手)は、春季は1階級優勝だった慶大が2階級で優勝を遂げた。ともに1年生。いわゆる“スポーツ推薦”がないにもかかわらず、12人の1年生がいるチームのパワーを見せつけた形となった。

 優勝した2人は、ともに小学校の時にレスリングをやっていたことと、春季は2位だったという共通点を持っている。55kg級で優勝した石橋拓樹は、伊調馨選手の出身クラブの青森・八戸クラブでレスリングをやっていた。3試合にテクニカルフォール勝ちしての優勝に、「割と、普通にうれしいです」と、日本語としてどうかな、と思える言葉で優勝の喜びを表した。

 「先輩方にしっかりけいこをつけてもらったおかげです」とのことで、勝因は「時間をかけずに勝てたこと」。1回戦が43秒、準決勝が1分14秒と、スタミナを残して決勝に進めたことが大きかったようだ。

 高校まではサッカーの選手。レスリング~サッカー~レスリングと進んだのは、特別に理由はなく、入学後の勧誘で「レスリング部に一番熱心に誘われたから」が入部の動機。この優勝は飛躍のきっかけとなるだろうが、「Aの選手とはすごく差があると思う。ちょっとでも詰めていきたい」と言う。

小学校限りでレスリングをやめてしまったものの、「沢内先生(和興=八戸クラブ代表)に会った時には、きちんと報告します」と、育ててもらった恩義は忘れていない。

■陸上や水泳などではロンドン・オリンピック代表選手輩出の慶大

 60kg級優勝の小澤健斗は「素直にうれしいです」と第一声。「練習したことが形になって出ました。グラウンド技が決まるようになって、テクニカルフォールにもっていけるようになった」ことを勝因に挙げた。

 小学校時代は茨城・日立クラブでレスリングをやっていた。中学は野球部で、高校は“帰宅部”(部活動しなかった)。慶大に入学し、いろんなクラブを見て回ったあと、石橋と同じく熱心に誘ってくれたレスリング部に心が動いたという。「(中学以降は)レスリングを続ける環境になかったんです。かといって、大学へ行ってやる、という気持ちがあるほどではなかったですが、レスリングは好きでしたね」とのこと。

 ともに、来年の新人選手権は「Bでやるなら(1階級上での)優勝を目標に、Aでやるなら1勝でもできるように頑張りたい」と話した。北原義之監督は「小学校でやっていたとはいえ、2人とも6年間のブランクは大きく、最初はレスリングの動きについてこられなかった。7ヶ月の練習で昔を思い出したようで、まったくの初心者よりもずっとのみ込みが早い。レスリングのスピードになってきた」と評価し、「優勝を経験したことで、さらに実力が伸びるはず」と期待した。

日本で3番目に長い歴史を持つ慶大は、スポーツの実績による推薦制度はあるが、多少優遇されるだけで、何よりも学力が必要。全国大会の上位入賞選手で慶大の推薦に受かるだけの学力を持っている選手は少ないのが現状。レスリング経験者は毎年1人か2人。「0」の年もある。

 学生界の上位へ行くにはかなり厳しい状況だが、北原監督は「今年は高校でやっていた選手が3人入部した。キッズレスリングが盛んになったことで、レスリングも勉強もできるという選手が出てくるはず。高校ではやっていなくとも、その前にやっていた学生もいる。そんな選手を発掘していくことと、まったくの素人を育てることとを柱に、チームを育てていきたい」と今後の展望を話した。

 現在は警視庁の土方政和監督が特別コーチとして毎週のように指導してくれており、時に警視庁の選手も参加するなどで強化している。「試合に対する臨み方、精神的なものも含め、一挙手一投足が生きたお手本です。今回はその成果の一つと、考えます」(北原監督)。

 早大とともに私学の雄と呼ばれ、陸上、水泳、セーリング、フェンシングではロンドン・オリンピック代表選手も輩出した慶大の、レスリングでの発展が期待される。