※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫) 優勝した藤波(左)と成國
成國は決勝で昨年優勝で世界カデット選手権3位の長谷川敏裕(東京・自由ヶ丘学園)と対戦。前年のチャンピオンというだけでなく、東京・ゴールドキッズで一緒にやってきた選手で、「お互いにいい部分も悪い部分も知っている」と、やりづらい相手だった。しかし、終始リードを守り、最後は12-6で勝利。「ほっとしました」と胸をなでおろした。
ただ、タックルできれいなテークダウンを取れなかったことに不満の残る内容だったという。相手の脇腹に頭を押し付けてエビ固めを狙う技はさえたが、「攻めていないので、これからの課題です。単純に(タックルが)下手くそなだけだけど、攻めるのが怖いと言う気持ちもあった」と反省した。
国体は初出場とはいえ、インターハイ王者になったことで、“チャレンジャー”という気持ちより、“タイトルを守る”という気持ちだったようだ。「(上のレベルへ行くには)自分から攻めないと勝っていけない」と、タックルで攻めて勝つ試合で「もっと上へ行きたい」と話した。
1年生にしてインターハイと国体の全国2大会を制し、他にJOCカデットも勝って最高の高校生活の初年度をおくっているように思えるが、「世界で勝てなかったので」…。世界カデット選手権(セルビア)の初戦敗退が痛恨の出来事のようで、来年は国内外すべての大会での優勝が目標か。
60kg級の藤波は、初戦の不戦勝のあと、4試合連続でテクニカルフォール勝ち。決勝は内がけでテークダウンを奪い、グラウンド攻撃を決めて1分19秒で勝負を決めた。「うれしい。一気にテクニカルフォールで試合を決めることは予定通り、作戦通り。来年につながる」と笑みを浮かべる一方、タックルでテークダウンを決められなかったことに、満点とはいかない決勝戦だったという。 いなべ総合学園OBの高橋侑希(山梨学院大)も入り、いなべから優勝した3選手と母親で記念撮影
インターハイは4回戦で優勝した文田健一郎(山梨・韮崎工)に惜敗し、表彰台を逃した。後輩の成國が1年生王者に輝いただけに、心のモヤモヤがあったと思われるが、続いて出場した世界カデット選手権で銀メダルを獲得して「自信を取り戻しました。その自信を今回に持ってくることができました」と言う。
文田がグレコローマンに出場する王者不在のトーナメントでは、全国高校選抜大会王者として、さらに世界カデット2位の選手として、インターハイ2位、3位の選手には「絶対に負けない自信があった」と言う。
やはり文田を破っての優勝がほしかったところ。文田はグレコローマンに専念することが伝えられており、もうリベンジのチャンスはないかもしれない。「このままでは納得できない。フリースタイルもやってほしい」と、1年先に大学へ進む文田に強烈な“ラブコール”。ライバルの切実な“求愛”に文田はどうこたえるか?
![]() 横から攻める成國=決勝 |
![]() 内がけでテークダウンを奪った藤波=決勝 |