※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
《世界選手権へかけるシリーズ》
男子フリースタイル | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
男子グレコローマン | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
女 子 | 48kg級 | 51kg級 | 55kg級 | 59kg級 | 63kg級 | 67kg級 | 72kg級 |
(文=保高幸子)
昨年のロンドン・オリンピックで松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)が銅メダルを獲得した男子グレコローマン60kg級。今年の世界選手権には、松本とトップ争いをしてきた倉本一真(自衛隊=右写真)が出場する。
「攻めて攻めて、見て楽しい、カッコいいレスリング。世界選手権では、投げやリフトでグレコローマンらしさを出して、隆太郎だけじゃないぞ! というところを見せたいです」と燃えている。
■中学時代にグレコローマンに目覚める
倉本は1986年生まれの26歳。今回が世界選手権に初出場で、年齢的には決して早い方ではない。ただ、高校時代の成績を見ると、2004年に全国高校選抜大会、JOC杯ジュニア、全国高校生グレコローマン選手権、国体と4つのタイトルを取っており、早くから期待されていた選手。もっと早く王者になってもおかしくなかった。
全日本の上位に食い込むようになってからは松本隆太郎の壁を超えることはかなわず、自衛隊入隊してからは全日本2位が最高。初戴冠は昨年12月の全日本選手権。今年、やっとでつかんだ初めての世界選手権代表だ。 西口茂樹強化委員長の見守る中で練習する倉本
「グレコローマンに目覚めたのは中学時代から」というのは、日本の選手としては珍しく早い。レスリング一本に決めて滋賀・日野高に進んだ倉本を待っていたのは、グレコローマンで世界選手権9位の実績を持つ村田知也コーチ(現三重・松坂工高教)だった。そこで基本の技を教わることができ、グレコローマンの技を磨くことができた。
夢は日野高出身者で初めてのオリンピック選手になること。「南先生(敏文=日野高監督)をオリンピックに連れて行きたい。恩返しするには、勝って結果を残す事しかない」と話す。日野高校出身者が口を揃えて言うことで、倉本も同じ熱い思いを持っている。南先生からの「お前が俺の夢と誇りなんだ」というメールは、胸にしみたという。
オリンピックを目指したのは「北京オリンピックから」。北京とロンドンは逃したが、リオデジャネイロは現実味を帯びてきた。三度目の正直とするために倉本は変わった。
■「外国選手をどんどん投げます!」
今年4月のアジア選手権(インド)では、「逃げたら審判への印象が悪い、と気にしすぎてしまった」と、成績を残すことができなかった。それは6月の全日本選抜選手権で修正できた。「アジア選手権での負けを経験して、構えを変えて今までより前に出るレスリングにしました。得意な投げばかり狙うと、相手を引き込むレスリングになり、相手はばてないんです。スタイルを変えて相手をバテさせ、そのすきを狙って腕取りや投げにつなげるようにしてきました」と、十分に対策を練った結果だ。 闘志が空回りした4月のアジア選手権。世界選手権で雪辱へ!
課題だったスタミナも、良い方へ変わってきた。減量が苦手で学生時代に55kg級から60kg級にアップしたが、それでも70kg越えることがあり、減量に苦しんだ。昨年からは、ふだんから節制するようになり、通常体重を67kgに押さえてきた。
「減量はずいぶん楽になりましたし、試合では以前より動けるし、力も入るんです」という実感があり、自信を強めた。全日本レベルの大会を2大会連続で優勝し、自身が一番感じているはずだ。
「誰とやっても、自分のレスリングをやれば負けない自信がある」と言える今の倉本には、新ルール、減量苦からの脱出、攻めるスタイルへの変更と追い風が吹いており、マイナス要素はない。力が強いので、日本選手の口からよく聞かれる「力負け」という言葉も、倉本には関係ない。
「外国人選手をどんどん投げますよ! メダルを獲りたい」とは頼もしい。世界に倉本の存在を示し、リオデジャネイロ・オリンピックへとつなげる。
倉本一真(くらもと・かずま=自衛隊) 初出場 1986年年10月29日、滋賀県生まれ、26歳。滋賀・日野高~山梨学院大卒。2007・08年全日本大学グレコローマン選手権優勝、2010・11年全日本選手権2位などを経て、2012年全日本選手権で初優勝。国際舞台では、2008年世界学生選手権2位、2012年アジア選手権2位など。今年4月のアジア選手権は初戦敗退に終わった。163cm。 |
◎倉本一真の最近の国際大会成績
《2013年》
【4月:アジア選手権(インド)】=9位(12選手出場)
1回戦 ●[0-2(0-1,1-5)]Wang Lumin(中国)
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】(18選手出場)
敗復戦 ●[1-2(1-0,0-2,1-2)]Joseph Betterman(米国)
準決勝 ●[0-2(0-6,0-1)]Almat Kebispayev(カザフスタン)
3回戦 ○[不戦勝]Wang Hui (CHN)
2回戦 ○[2-0(1-0,1-0)]Yerbol Kikbayev(カザフスタン)
1回戦 BYE
【1月:ジャック・ピント・カップ(団体戦=米国)】
4回戦 ○[フォール、2P0:35(8-0、F)]Dmitry Ryabchinsky(米国)
3回戦 ○[2-0(3-0,2-0)]Marco Lara(米国)
2回戦 ○[2-0(4-0,1-0)]Julian Gunnels(米国)
1回戦 ●[1-2(3-0,0-2,0-1)]Joe Betterman(米国)