※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
《世界選手権へかけるシリーズ》
男子フリースタイル | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
男子グレコローマン | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
女 子 | 48kg級 | 51kg級 | 55kg級 | 59kg級 | 63kg級 | 67kg級 | 72kg級 |
(文=保高幸子)
女子59kg級はオリンピック階級ではなかったが、正田絢子と山本聖子が世界一に輝くなど日本が得意とした階級。今年、その59kg級で世界選手権初出場を決めたのは伊藤彩香(至学館大=右写真)だ。
「初戦からどんな強豪と当たるか分からない世界選手権です。攻めるレスリングができれば、たとえ負けても次に生かせると思う。タックルは得意ではないけど、崩して前に出れば、攻めるレスリングはできる」との気持ちで、初めての世界選手権へ挑む。
■2012年世界ジュニア選手権出場の好機を、急病で断念
伊藤は三重・四日市市の四日市ジュニア教室でレスリングを始めた。女子が初めて正式種目となった2004年アテネ・オリンピックをテレビ観戦した小学生の時から、ばく然とオリンピックへの夢を持ち始めたが、中学時代はタイトルがなく、全国中学生選手権で3位が最高。学校の部活動ではソフトボールで遊撃を守っていた。
「楽しくスポーツをやっていた」という女の子の意識が変わったのは、高校に入ってから。せっかく続けるのだから、「強いところでレスリングをしたい」と、至学館高校、そして至学館大学へ進学。めきめきと力をつけて、2009年にアジア・カデット選手権で優勝。 全日本合宿で練習する伊藤
それまでのアジアでの実績に加え、世界でも力を発揮したかったが、大会直前にマイコプラズマ肺炎を患ってしまい、出場を断念。その大会で伊藤の代わりに出場したのは55kg級の浜田千穂(日体大)。結果は優勝だった。1階級下の浜田が世界大会で優勝したというのは、「悔しかった」と振り返る。その分、今回の世界選手権で「私も、という気持ちです」と闘志を燃やす。
■この1年間で急成長し、世界の舞台へ
昨夏のロンドン・オリンピックの時点では、「全日本選手権で優勝したいな」という気持ちで、まだまだオリンピックを具体的な目標としてとらえられなかった。その数ヶ月後の全日本選手権で優勝。決勝の相手は2010年にJOC杯で負けた坂野結衣(日大=当時東京・安部学院高)で、2年ごしにリベンジした形だ。
全日本チャンピオンとなり、世界選手権代表がかかった今年6月の全日本選抜選手権は「チャンピオンなんだから勝たなければ、という気持ちでした」と、いつもとは違う緊張があったことを話す。加えて、準決勝の増田奈千(環太平洋大)戦で右肩を脱きゅうするアクシデント。棄権するかどうか迷い、世界選手権への道が断たれるピンチに陥った。
しかし出場を決意。「負けてもともと、と開き直れたので気楽でした」と振り返り、坂上嘉津季(至学館大)との決勝は、けがのおかげでかえって気負いなく闘うことができた。終了間際に決まった首投げは「得意なわけではない」と話すが、それでも決められたのは勝負強さだろう。 全日本選抜選手権で優勝した伊藤。顔がゆがんでいるのは、うれしさ? それとも、右肩の痛さ?
■ユニバーシアードで世界のレベルの高さを痛感
世界選手権出場を決めたあとに出場した7月のユニバーシアード(ロシア)では、1回戦で米国のアリソン・レーガンに黒星。敗者復活に回って1勝をあげたが、5位に終わった。「決勝に上がったレーガンがアゼルバイジャンの選手に圧倒されているのを見て、上には上がいるんだなと思いました」と、世界のすごさを実感した。
「もちろん優勝したいけれど、最低でもメダルという目標です。レーガンにはリベンジしたい」。今やっている練習の成果を出せば、それはかなうだろう。
3年後のリオデジャネイロ・オリンピックに向けて、今年の世界選手権で国内のライバル達に差を付けたいところ。宣言通りに崩して前に出るレスリングをし、2013年を本当の飛躍の年にしたい。
伊藤彩香(いとう・あやか=至学館大) 初出場
1993年1月4日、三重県生まれ、20歳。三重・四日市ジュニア教室~愛知・至学館高卒。2009年アジア・カデット選手権優勝、2011年アジア・ジュニア選手権優勝と力をつけ、2011年の全日本選抜選手権3位、全日本選手権2位。2012年全日本選手権で優勝。2013年は1月にロシア最高レベルの国際大会と言われる「ヤリギン国際大会」で3位に入賞。全日本選抜選手権でも勝った。7月のユニバーシアードは5位。
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