※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 2年連続3兄弟優勝の田窪兄弟。左から成将、育明、剛共、松江クラブの高村行雄代表
快挙達成に、長男の成将は「うれしいです。プレッシャーもあったけど、3人で今まで頑張ってきて(勝つ)自信はありました。結果がついてくると信じて試合に出ました」と喜びの声。
成将にとって自分の試合のほか、やることがもう一つあった。弟たちのまとめ役だ。「自分が一番上なので、2人の面倒を見たり、(2人が)ケンカしないようにしたりとかが大変だった。2人とも一生懸命僕についてきてくれました」と、3人が一体となってつかんだ2年連続3兄弟優勝だった。
■警視庁コーチの熱い応援の理由は?
次男で4年生45kg級の育明と三男で2年生26kg級に出場した剛共は、ともに2連覇を達成した。決勝の試合順は次男、長男、三男。“おおとり”は三男の剛共だった。次男の育明は安定感があったが、剛共は「体重も軽くて体も細いから…」と、不安要素があった。
3連覇を達成するとともに、弟2人をまとめた長男・成将
島根県在住の3兄弟の試合が始まると、セコンドには警視庁第六機動隊の関係者が自然と集まってきた。その中には全日本のコーチを務める田南部力コーチや豊田雅俊コーチなどの姿も。3人の優勝が決まると、自分の所属選手のように喜んだ。
実は田窪3兄弟の父・隆範さんは島根県警に勤務する警察官で、7年前に警視庁に1年間、赴任した経緯がある。当時6歳、4歳、2歳だった3兄弟は、知人の勧めで警視庁の六機クラブでレスリングを始めた。母・真知子さんは「身体能力が高まるし、オリンピックや世界選手権で活躍した方たちに教えてもらうなんてめったにできないこと」と喜んでクラブに送り込んだそうだ。
■兄弟、家族の絆で勝ち取った偉業
3人の偉業を支えた父・隆範さん
昨年、三男が小学生に入り、3人そろって初めて全国大会に出た。真知子さんは「去年は初めて3人で出るから頑張ろうと思ったら、優勝できたんです。今年は長男が最後なので、3人で出る最後の大会だったから、やっぱり今年も頑張ろうと思って」と、家族全員でこの大会に照準を合わせてきたことを説明。来年以降、レスリングを続けるか未定とした成将も、「3人で勝つことが目標だった」と振り返る。
3人が小学生でいられる2回のチャンスを、兄弟、家族の絆で勝ち取った偉業だった。