2013.06.29

【特集】飛騨の山中で1泊2日の交流大会…10回目を迎えたマイスポーツ杯

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=保高幸子)

 岐阜・高山市の国立乗鞍青少年交流の家で6月22日、同市のマイスポーツハウス(洞口善幸代表)主催の第10回マイスポーツ杯レスリング大会が開催された。自然に囲まれた乗鞍のふもとで、子供達は熱戦を繰り広げた。

 名目はレスリング大会。しかし、目玉は試合とは別にあると言えるかもしれない。参加者は、到着するとまず講堂に集合して入所式を行なう。そこで青少年交流の家での厳しいルールについて講義を受ける。

 ベッドメーキングや翌朝の布団のたたみ方、就寝時間から掃除の仕方、部屋での過ごし方まで細かい指示がある。テレビもなく、ガムも禁止。規律ある生活を指導される。講義の後はマットを全員で協力して作り、試合の準備をする。参加者は片付けもみんなで行ない、すべて参加者全員で協力して行なわれるのが特徴だ。

 大会は1泊2日の初日に行なわれ、小中学生が対象。今年の参加者は150人だった。初日は入所式とレスリング大会が行なわれ、2日目の23日(日)は参加チームの合同練習が行なわれた。毎年ゲストが来場するが、今年は米国の総合格闘技イベントUFCで活躍中の総合格闘家、五味隆典氏(久我山ラスカル=木口道場出身)が参加。2日目にはちびっ子達とスパーリングをして交流した。

■神奈川や山口からも参加チームあり

 入所式ではオリンピック3連覇の女子55kg級・吉田沙保里選手(ALSOK)の父でナショナルチーム・コーチの吉田栄勝氏(三重・一志ジュニア代表)が「五輪存続に向け、全国のちびっこみんなで力を合わせて頑張りましょう」とあいさつした。

 参加チームは愛知、岐阜、三重、富山、福井などの近隣県がほとんどだが、山口県の斎藤道場や神奈川県の木口道場からも参加があった。斎藤道場は今回は8回目の参加。勝村靖夫代表は「斎藤道場でも子供達の健全育成をモットーに、道場でも田植えや豆まきなどの色々な行事をしている。このようなルールの厳しい場所での生活の経験は、子供たちのためにも良い。集合時間より早めに着いて世界遺産の白川郷を見学させたりもできる。毎年参加したいです。私も子供達も楽しみにしています」と話す。

 木口道場から参加の舘野大和くんと深澤澪央くんは「みんなと同じ場所でご飯を食べたり、遊んだり、何もしない時間もあって、レスリング以外のことも楽しいし、ご飯もおいしい。普段の大会とは違う。いつも楽しみにしています。朝は山を散歩してクワガタを探したり、他のチームの子と仲良くなってうれしいです」と元気よく答えてくれた。

 審判長で参加した粟田敦さん(法大監督)も「地元のたくさんの協賛社(店)のおかげで成り立っている大会なので、みな帰りに市内へ降りて、そういったお店を回って食事したりお土産を買うんですよ」と話してくれた。

 マイスポーツハウスの洞口代表は「ただレスリングするだけでなく、普段は体験できないことや規律を教え、特別な大会にしたいと思って10年続けてきました。遠い山奥で保護者の準備は大変だけれど、皆さんにも喜んでもらえて私達もやりがいがあります。子供達だけでなく、親同士、指導者同士も交流を深めてレスリングを発展させていければ」と話す。

 人里離れた飛騨の山で、レスリングを愛する者たちだけで過ごす1泊2日は、レスリングで得るもの以上の経験を与えてくれるようだ。


高山市内から車で1時間の場所にある乗鞍青少年交流の家

参加選手全員で会場づくり

試合会場。熱戦が繰りj広げられた

試合で汗を流す選手だちだが、試合以外で得るものも多い

洞口善幸代表

プロ格闘家の五味隆典さん

一志ジュニア教室の吉田栄勝代表