2013.06.22

【全日本選抜選手権・特集】女子51kg級・入江ななみ(九州共立大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫) 《決勝VTR》


■入江ななみの試合結果
決  勝 ○[4-2]宮原優(東洋大)
準決勝 ○[Tフォール、2P1:36(8-0)]田中亜里沙(早大)
2回戦  ○[Tフォール、1P1:13(9-0)]渡辺ひかり(環太平洋大)
1回戦   BYE

 やっと手にした頂点。しかし、入江ななみ(女子51kg級=九州共立大)は有頂天にはなっていなかった。試合直後の「まだ実感がわかないです」という言葉もその一つであろうが、とにかくこれまでが悔しさとの葛藤だったからだ。

 全日本選抜選手権は、2011・ 12年と2年連続で決勝に進出しながらも、あと一歩のところで頂点を逃していた。全日本選手権は昨年の3位が最高。今年4月にはアジア選手権(インド)に抜擢されたものの、初戦敗退の8位。これは日本女子チームの中では最も悪い成績だった。

 もっとも、この結果が今回の優勝を導くことにもつながった。決勝の相手は昨年の全日本選手権2位の宮原優(東洋大)。実績では、宮原が昨年のゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャンン)優勝などシニアの国際舞台ででも結果を出しているので上。今年の両者の対戦は宮原が2連勝。しかし、ここ2年間の対戦成績は五分の相手で、入江にとって決して苦手の相手ではない。

■最近の入江ななみ-宮原優の対戦成績

2011年 クイーンズ 入江ななみ 0-2(0-1,1-2) 宮原 優
JOC杯 入江ななみ 2-1(0-1,3-0,1-0) 宮原 優
全日本選抜 入江ななみ 2-1(0-1,3-0,3-0) 宮原 優
2012年 全日本選抜 入江ななみ 2-1(0-1,3-2,1-0) 宮原 優
2013年 クイーンズ 入江ななみ 0-2(0-1,1-4) 宮原 優
JOC杯 入江ななみ 1-2(0-1,4-0,0-1) 宮原 優

 「ここで負けて得意意識をもたれてはならない」という気持ちがあったことも想像に難くないが、「アジア選手権の悔しさがあったからこそ、ここまでたどり着くことができたのだと思います」と入江。つまずきをプラスのエネルギーに変え、遂に手に入れた「NO.1」の称号。「今回の優勝はみなさんのおかげです」と監督、コーチ、周囲の方々への感謝の気持ちを忘れなかった。

■勝つために、確固たる4つの信念

 この「NO.1」という称号は、自身が通う九州共立大学のモットーでもある。大学案内には「GO TO THE TOP!! 目指すはいつもNO.1大学も学生も、有言実行であらゆる面でのNO.1を目指しています」という言葉が記されている。また、レスリング部は先月、創部5年目にして西日本学生二部リーグ優勝を果たした。こういった勢いも入江ななみを勢いづかせることにもなったのだろう。

 もう一つ。彼女には確固たる信念があった。「日頃の生活で自分が負けないことを心がけている」という言葉の真意に、その確固たる信念が隠されている。

・挨拶をきちんとする。

・帰宅したら、率先してお手伝いをする

・やると決めたことは手を抜かない

・周囲に流されない

 この四つは、彼女がふだんから心がけていることである。最後の「周囲に流されない」というのは、たとえば登校した時、自分はレスリング部所属であるが、キャンパスにはいろいろなタイプの人間がいる。友達、先輩、後輩…。様々な人と接する機会があって楽しい時間を過ごしたとしても、決して自分を見失わないという信念だ。

 世界選手権の代表は、25日の参考試合を経て決まることになった。今年の出場は、まだ分からない。しかし、「NO.1」になった彼女にこの信念がある限り、「世界NO.1」の称号は、決して“夢物語”で終わることはない。