※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫) 《決勝VTR》
■田野倉翔太の試合結果
決 勝 ○[3-2]長谷川恒平(福一漁業)
準決勝 ○[2-0]尾形翼(ALSOK)
2回戦 ○[4-1]文田健一郎(山梨・韮崎工高)
1回戦 BYE
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男子グレコローマン55kg級で長らくトップに君臨していたロンドン・オリンピック代表、長谷川恒平(福一漁業)に競り勝った。田野倉翔太(クリナップ)は、初優勝を決めた瞬間、マット上でバック宙を決めて喜びを爆発させた。
息詰まるような接戦だった。第1ピリオド、長谷川に先制点を許しながら、第2ピリオドで2-1と逆転。クライマックスは残り19秒に訪れた。警告を受けてしまい、パーテールポジションを強いられた。「これで返されたら負ける。そう思って耐えていたら、残り3秒で一瞬時計を見てしまった。最後のブザーが鳴るまで気を抜かないようにしたい」。オリンピアンの攻撃をしのぎ切ったシーンを、反省を交えながら笑顔で振り返った。
■尊敬する先輩だけに、壁を超えたかった
これで長谷川には3度目の挑戦にして初勝利。「あんなにストイックに練習する人はいない」というように、長谷川のことをずっと尊敬し、その背中を追ってきた。ロンドン・オリンピックには長谷川の練習パートナーとして同行し、大舞台の空気を吸って帰ってきた。
悲願の長谷川越えを達成した瞬間
その成果は早々に現れた。長谷川が不在だったとはいえ、昨年の全日本選手権を制し、冬には国際大会でも結果を残した。2月のハンガリー・グランプリで優勝し、4月のアジア選手権(インド)は2位。「(国際大会の)優勝といっても。それほど強豪選手は出ていなかった」と謙遜するが、実力と自信が着実に高まったに違いない。
9月には初出場となる世界選手権(ハンガリー)が待っている。「自分は体力がない。新ルールに変わって、そのあたりが課題になると思う。もっともっと練習して世界選手権では金メダルを獲りたい」。4月に新社会人となった22歳は、今が伸び盛り。目いっぱいトレーニングをして大舞台で暴れるつもりだ。