※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
東日本学生リーグ戦の日体大-山梨学院大の84kg級で、コーション(警告)をめぐって微妙な判定がありました。
試合は第3ピリオド、日体大の選手(赤)が1-0とリードして後半の1分へ突入。レフェリーから積極的な攻撃を指示されます。赤の選手は相手の脚を取りにいくなどしましたが、ポイントにはつながらないまま終了のホイッスルが鳴り、赤が1-0で勝ったかのように思われました。
しかし、終了間際にレフェリーは赤のリストバンドをしている手を上げており(赤のコーションを意味する)、試合終了前にチェアマンもこのコーションに同意。赤にコーションが課せられて青に1点が入り、ポイントは1-1へ。コーションを相手に与えた青の勝利となりました。
この試合に勝てばチームの勝利が近づく日体大陣営のみならず、本部席にいた役員の中にも、「赤がコーションを取られるほど逃げていたとは思えない」と、裁定に疑問を持つ声がありましたが、粟田敦審判委員長を含めた4人のA級審判員(うち一人は国際審判員)の意見は「コーションの判定は正しい」-。
審判員の説明によると、「赤は動いてはいるが、組みにいってポイントを取る動きではない」「赤はタックルにいって相手の脚を取りながら、そのあとポイントを狙う動きがなく、しがみついているだけで時間稼ぎ」という解釈です。
審判の行動に関しても、最初に選手に注意、2度目に選手とセコンドに注意、その後にコーションを課しており、この手順もルール通り。
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《国際ルール第51条 技術回避》
「技術回避」は、防御側のレスラーが、攻撃側のレスラーの技術展開をコンタクトせずに、明らかに故意に避けることから起こる。
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《今春、審判員会から公示されたコーションに関する手順》=4月11日本HP掲載
1回目 発声注意
2回目 試合を止め注意
3回目 ○+1が成立 (マットチェアマンの同意が必要)
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以上の理由により、このコーションの裁定は間違いではありません。
今春、日本協会審判委員会から「ルール改正ではなく、コーションのルールを厳しく適用する」という通達がありました。その一環と解釈してもいいかもしれません。1-0とリードした場合でも、終了までポイントを取りにいく姿勢を忘れてはならないでしょう。
(監修=東日本学生連盟・審判委員会)