※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
【イスタンブール(トルコ)、文=保高幸子、撮影=矢吹建夫】やっとつかんだメダル-。女子67kg級で3度目の出場にして銅メダルを取った井上佳子(クリナップ)は「初めて世界選手権に出てから4年。長かったなぁ、と思います」と第一声。今まで破れなかった3位決定戦の壁。今回は強い気持ちをもって闘うことができた。これまで超えられなかったのは世界の壁ではなく、自分の壁だった。
銅メダルを獲得し、栄和人監督から祝福される井上
反省すべき点はたくさんある。コーチ陣も技術の面でのアドバイスをした。敗れた準決勝は、緊張とモンゴル選手への苦手意識からか、井上の悪いくせが出て、構えてしまった。ポイントにつながらない攻撃が続く。タックルに入っても、相手の力が強くつぶされてしまい、井上のレスリングをさせてもらえない。
井上のレスリングをするためには、「タックルに入ってからの対処法というか、ポイントを取れるようにすること」が必要になる。負けた後、気持ちを切り替え、3位決定戦では思い切ってやろう、と前向きになれた。
3位決定戦は井上が先制したため、相手が投げ狙いに徹し、井上は逃げてしまってそれ以上攻められなかった。結果的にメダルを獲得したが、「今後の目標は?」と聞かれると、「どの選手とも接戦してしまうので、勇気を持って試合をしていきたい」と、攻撃の手を休めない井上らしいレスリングの展開を約束した。
今年から所属し応援してもらっているクリナップは、3月の地震によって被害を被った。「会社のためにも頑張る」と言っていた井上は。その言葉を守ってメダルを獲得した。だが67kg級は五輪実施階級ではない。選手の夢と言ってもいい五輪出場を果たすためには12月の全日本選手権での階級が重要になってくる。
「今後72kg級に上げることを考えているか」との問いには、「まだ分からないですが、もしかしたら挑戦するかもしれないです」と控えめ。しかし今回世界でメダルを獲得したことは、井上にとって大きな変化をもたらすはず。そうでなくても井上の目標はさらに高くなる事は間違いない。
67kg級世界チャンピオンを目指すにしても、五輪を目指すにしても、井上のこれからに大きな期待がかかっている事は間違いない。