※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)
鮮烈な高校デビューを果たした成國(右)と目標の先輩・藤波
東京で育ち、キッズタイトルを総なめにしてきた成國は、高校進学は三重県のいなべ総合学園高に“国内留学”。同高はインターハイ個人戦3連覇の高橋侑希(現山梨学院大)を輩出するなど近年力を伸ばしており、一学年上には成國と同じく全中3連覇の藤波勇飛がいて、今大会ではカデット63kg級で大会3連覇を達成している。
中学タイトル五冠の成国の“高校デビュー”に、周囲は当然「優勝」を期待した。その期待が重圧となってしまったようで、成國は「高校に入ってのデビュー戦だったので、とても緊張して硬くなってしまった」と、初戦の諏訪間翔太郎(佐賀・鳥栖工高)にローリングを返されてピリオドを落とすシーンもあった。
■マットも生活も変わり、簡単に適応できなかった
緊張だけではなかった。3月末に東京から三重に移り、藤波俊一監督宅に下宿することになった。日常の生活は監督夫婦が面倒を見てくれているものの、調整は自己管理が基本。「前までは母(元世界女王の成国晶子さん=旧姓飯島)に頼っていたので、自分で管理するのが大変だった」と、生活環境と練習環境の両方が一度に変わり、適応にするにはさすがの成國でも苦戦したようだ。
決勝で闘う成國
多くの壁があり、会心の出来ではなかったものの、それを乗り越えて優勝を果たした。大きかったのは、やはり藤波勇飛の存在だ。「強すぎますよね。でも、やっぱり刺激受けてます。欲を言うと高校の全タイトル狙ってます」と白星街道を宣言。
全タイトルを制するには、両スタイルで勝つ必要があるが、「専門はグレコローマンですが、得意なのはフリースタイルなので(笑)」と視界は良好。キッズからのエリート選手、成國大志の高校生活が幕を開けた。