インターハイを含め、関東と九州で“キャッチボール”していた学校対抗戦の覇権が、2015年のこの大会で京都八幡(京都)が優勝して以来、11年(21シーズン)ぶりに近畿に戻った。今回も、公立・普通科高校の京都八幡の快挙で通算3度目の優勝。決勝は、下馬評の高かった昨年のインターハイ王者・自由ヶ丘学園(東京)の試合で、最後の125kg級を取り、栄冠を引き寄せた。
■2008年3月29日:【特集】推薦も合宿所もない公立高校の快挙! 一貫強化実らせた京都八幡高・浅井努監督
■2015年3月29日:【全国高校選抜大会・特集】7年ぶり2度目の栄冠! 公立高校が2度目の優勝…京都八幡(京都)
「選手はよく頑張りました」と声を振り絞った浅井努監督。キッズ時代から見てきた選手から受けた胴上げは「気持ちよかったです。選手に感謝です」とのことで、感慨無量の表情で選手を見つめた。
厳しい闘いだった。51kg級は不戦勝だったが、55kg級と60kg級で連敗。相手は国民スポーツ大会51kg級を制した前田悠樹と、インターハイ1年生王者の薬野柑太で、ともにポイントを取れないでの黒星。71kg級の不戦敗は決まっていたので、ここで実質3敗目。“王手”をかけられてしまった。
浅井努監督の一縷(いちる)の望みは、キャプテンの鸙野大河(65kg級)であり、小西寿(81kg級)。ともに昨年の国民スポーツ大会の王者であり、「ふだんの練習から、2人がチームを引っ張ってくれています。2人が頑張っているから、周囲もついていっています」と、信頼を置いていた。結果は、この2人が勝ってチームスコア3-3の同点へ。125kg級に優勝を託すことになった。
雌雄決するマットに上がったのは、ハイドル・アリ・モルタザ。両親の仕事の関係で約10年前から日本に住んでいる生粋のアフガニスタン人。中学までは柔道部に所属し、高校進学を機にレスリングに転向。キャリアは、まだ2年。近畿予選は5位の選手だ。
まして左ひざを痛めており、「そこをタックルで攻められたら、動けないくらいのケガでした」とのこと。同監督は、圧倒的な不利な状況で勝つには「投げ技を決めるしかない」との作戦。それが見事に当たり、投げ技からの押さえ込みでフォール勝ち。陣営と応援者が歓喜に包まれた。
モルタザは「絶対に勝つ、という気持ちでした。チームのために負けられない、と思いました」と振り返る。タックルよりも投げ技で勝機を目指すスタイルで、「それが見事に決まりました」とうれしそう。
その後の個人対抗戦(92kg級)では、中学王者だった金澤永和(千葉・日体大柏)に3回戦で敗れて上位進出はならなかったが、今後はグレコローマンにも活路を見出し、頑張っていきたいと言う。
モルタザ以外の5選手は、全員が京都八幡ジュニア教室からレスリングを続けてきた同期生。同監督は「心がひとつになって、この結果が出たのかな、と思います」と振り返り、一貫強化ではぐくんだ相乗効果の結果とも推測するが、もうひとつ、大きな原動力となったのが、近畿予選の決勝で大体大浪商(大阪)に敗れたこと。
浅井監督は「あの負けで、もっと頑張らないと全国で勝つのは厳しいことを選手が自覚してくれました」と話し、負けたあとの約2ヶ月半の練習は、それまでとは意識が違っていたと感じていた。「あの負けがあったから、今日の結果につながったと思います。あそこで優勝していたら、この大会はどうなったか分かりません」と言う。
その逆も成り立つ。この優勝で気をゆるめたら、インターハイでの優勝はない。それは十分に意識していいる。この大会の優勝は3度目だが、最初の優勝(2008年)のときのインターハイは準決勝で、2度目の優勝(2015年)のときは準々決勝で敗れ、春夏連覇はならなかった。
どんなに引き締めても気持ちのすきが出てしまうこともあるし、日星や丹後緑風が控える京都予選が、これまた過酷な闘いになることが予想される。春夏連覇は簡単にできるものではない。それでも、浅井監督の気持ちは高まっている。「小人数で、ほぼ現有戦力のままインターハイを目指すことになります。さらに練習して、まず京都府予選、それからインターハイを目指します」ときっぱり。
前回の優勝のあと、2017年に脳梗塞で倒れ、3年間くらいチームを離れていた。その間、田中亜里沙監督(早大~同高教)らが指導に携わり、つないでくれた。「(11年間は)長かったですね。今回は3度目の正直になります。今度こそ春夏連覇を達成したい」と力強く言い切った。