2026.02.22NEW

【2026年San-E Cup関西オープン・特集】オーストラリア選手を連れて出場、自身の目標はLA2028…下山田培(日体大OB)

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インスタグラム「PINFALL JAPAN」およびフェイスブック「PINFALL JAPAN」、試合写真・動画等が掲載されています。

 

(文=布施鋼治)

 「オーストラリアでは、選手たちに結構厳しい練習メニューを伝えるので、僕は『怖い人』というイメージになっているようです。日本に来たら、そうじゃないことが、すぐばれるんですけど」

 下山田培(日体大OB)は苦笑いしながらそう語り、首をかしげた。日本での彼は、ストイックながら、どこかユーモラスな雰囲気をかもし出していたが、オーストラリアではストイックな部分だけが強調されているのだろうか。

 2月13~14日、天理大で行われた2026年「San-E Cup関西オープンレスリングフェスティバル」に出場した下山田率いるオーストラリア選抜チームは、8チーム中7位に終わった。いずれの試合も重量級勢の敗北が響いた。体はある程度できているものの、そのフィジカルがレスリングにいかし切れていない選手が多かった印象だ。

▲関西学院大選手と記念撮影におさまるオーストラリア選抜チームの選手=撮影・布施鋼治

 「もう少しできるかな、と予想していたけど、経験が浅かったということでしょう。特に重量級は、現地に練習相手がなかなかいない。いたとしても、単に太っているだけだったりしますからね。まあ、今回はみんないい経験になったと思います」

 オーストラリアは、さまざまな国や地域から移民を受け入れている。そんな歴史的な背景も手伝い、今回のメンバーも、一方の親がクロアチア、ドイツ、南アフリカにルーツを持っていたり、両親そろってアフガニスタン出身など、非常に国際色豊かな面々がそろった。

 「英語が完璧ではなくても、分かり合える部分はある。僕の英語のボキャブラリーだと伝え切れていない部分も、やさしい人なら『こういうことを、伝えたいんだろう』と好意的に解釈してくれますね」

▲オーストラリア選抜チームのセコンドについた下山田培

昨年の世界7位でLA2028の光が見えた!

 話題を、オーストラリア国籍で2028年ロサンゼルス・オリンピック出場を目指す下山田に移せば、昨年秋、同国代表として出場した世界選手権・男子グレコローマン67kg級で7位に入賞したことで、「オリンピック出場が近くになった感じがします」と、大きな光が見えてきたと言う。

 世界選手権が行われたクロアチアで話を聞いたときには、オーストラリア国籍の取得に暗雲が立ち込めているような発言もあった(注=世界選手権はオーストラリア代表で出場できても、オリンピックはパスポートを含め完全な国籍変更が必要)。今年に入ってオーストラリア・レスリング協会はメンバーを刷新。組織の長も入れ替わったので、下山田がオーストラリア代表としてオリンピックに出場することに難色を示す声は、今のところ聞こえてこない。

 「いろいろなところから国籍変更に関する支援は出てくると思う。なるべく早い段階で国籍を取得できるようにしたい。一番有効な方法は。オーストラリアのオリンピック委員会から政府にレターを出してもらうことだと考えています」

 以前はプールの監視員をしながら自らの練習と指導に励んでいた。最近は練習と指導だけに専念できるようになった。

「オンとオフをはっきりさせないと、自分の練習がおろそかになってしまう。向こうではレスリングのセミナーもやっているけど、切り替えられるところは切り替え、自分の練習に集中できるようにしています」

MMA(総合格闘技)選手を相手に工夫しながら練習

 選手同様、下山田も現地では自分のレベルに合った練習相手探しに苦労する。レスリングでは発展途上の国なのだから、それも仕方あるまい。先日、都内にあるMMA(総合格闘技)のジムで日本のプロMMAファイター80名も集めてセミナーを開いたロバート・ウィテカー(オーストラリア史上初のUFC世界王者)とは、いつも一緒に練習しているという。

 「MMAに関して僕はそんなに詳しくないけど、オーストラリアはブラジリアン柔術もハイレベルだし、MMAも技術的には日本より少し上なのかと思います。ピュアなレスリングだったら、日本の方が上ですけどね」

▲下山田がときに練習するMMAファイターのロバート・ウィテカー(左)。右は日本のMMAファイター、岡見勇信=撮影・布施鋼治

 週1回は、アジアで大きな勢力を持つONE Championshipの元世界王者マーティン・ニューイェン(オーストラリア)とも練習する。

 「向こうで(レスラーを相手にした)自分の練習をしようとすると、(自分のレベルにあった相手がいないので練習の強度が)制限される。そういう中、なるべくグレコローマンに近い練習をしようと思い、MMAの選手と練習もしています。そのときには壁レスリングを意識してやるようにしています」

 海外でMMAの試合場はケージ(金網)に囲まれたものが一般的なので、MMAではケージを壁に見立てた壁レスリングが発達する。このスタイルをレスリングにもいかそうと、下山田は壁レスリングにも果敢に挑む。

 「そこでは、あえて相手の足に触らないとか、自分で制限をかけて動くようにしています。ただレスリングをしているだけだと、やられてしまうこともあるので、自分でも関節技を覚えてやり返すようにしています」

 遠い将来、MMAに転向する可能性は? 

「僕は痛いのが好きじゃないので(微笑)。でも、MMAは奥が深いなと思い、最近はちょっとはまっています」

 ロサンゼルスに向かってまっしぐら。次戦は2月25日からアルバニアで開催されるUWWランキング大会・第2戦を予定している。

▲オーストラリア代表として7位に入賞した昨年の世界選手権。ロサンセルスのマットに立てるか