2026.02.06NEW

全日本王者・長谷川敏裕(三恵海運)らが富山県のキッズ・高校生選手を指導

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 富山県レスリング協会が主催し、富山県少年少女レスリング連盟主管による2025年度「レスリング優秀選手招聘事業」が1月31日~2月1日、富山・富山第一高校レスリング場で行われ、男子フリースタイル61kg級全日本王者の長谷川敏裕、同86kg級全日本2位の髙橋夢大、同97kg級全国社会人オープン選手権王者の吉田ケイワン三恵海運所属選手と指導スタッフ(藤本健太監督、鈴木貫太郎コーチ)が、キッズ選手および高校選手を指導した。

▲富山県の「レスリング優秀選手招聘事業」に参加した地元選手と三恵海運の選手・スタッフ

 公益財団法人ゴールドウイン西田東作スポーツ振興記念財団の事業として毎年行われている同県の実力アップを目指すイベント。今回は、同県にある5つのキッズ教室の選手と、初日のみ3つの高校からも選手が参加し、全日本トップ選手からの指導を受けた。

 富山県少年少女レスリング連盟の角地山豊会長(株式会社アイザック勤務)は「富山県レスリング界の強化のため財団からご支援を受けています。(現在の日本協会の)井上謙二・強化委員長に来てもらったこともあります」と説明。基本は中学生の強化だが、キッズ選手と高校選手も参加。県のレスリング界を挙げての貴重な一貫強化練習だと言う

 県内にキッズ教室は6チーム、レスリング部のある高校は4校あるが、部員が少ないチームもあり、合同練習で強化しないとならない状況。加えて、全日本のトップ選手に接する経験はない選手ばかりなので、「とても有意義で、刺激になった事業となりました」と振り返る。選手を派遣してくれた三恵海運へ感謝するとともに、「県のレスリング協会と少年少女連盟の役員の皆様の尽力のおかげでもあります。期待にこたえたい」と話した。

▲キッズ選手を指導する全日本王者の長谷川敏裕選手

▲初日は高校選手も参加。2面マットで熱気ある練習が行われた

 全日程を終えて、三恵海運の藤本健太監督や選手が伝えたのは、この2日間だけで技をマスターできるものではないこと。「各所属で何度も反復練習することで、自分の技になる」と話し、この経験を生かすのは各選手の今後であることを強調した。

世界王者を輩出したレスリング王国

 富山県のレスリングは、1947(昭和22)年に協会が設立され、古い歴史を持つ。1956・57年に滑川高がインターハイ学校対抗戦で2位に入賞するなど強豪県のひとつだった。

 1960年ローマ・オリンピックに石倉俊太(滑川高~明大)が出場し、1963年には堀内岩雄(滑川高~日大)が世界王者へ。翌年の東京オリンピックで銅メダルを獲得。1965年世界選手権では福田富昭(滑川高~日大=日本協会前会長)が優勝するなど、世界へも飛躍する選手を擁する「レスリング王国」を築いた。

▲数多くの強豪選手を招聘し、王国復活を目指す富山県

 その後もアジア大会代表や、全国大会の優勝者や入賞者も生まれたが、1960年代の栄光から後退してしまったのは事実。それでも、1994年インターハイ(滑川市)、1996年全国少年少女大会(黒部市)、2000年国民体育大会(黒部市)など地元での全国大会を目指して強化を続け、「とやま国体」では少年の部に出場した8選手が全員入賞という成績を残した。

 しかし、男子の日本代表クラスの選手は途絶えてしまった。宮原優(JOCエリートアカデミー~東洋大)が2010年ユース・オリンピック優勝、登坂絵莉(愛知・至学館高~至学館大)が2016年リオデジャネイロ・オリンピック優勝などの成績を残しているが、中学卒業とともに県外へ進んだ選手。富山県自体のレスリングを盛んにし、王国復活を目指したいところだ。

 このままではいけない、という県をあげての再生へ向けた強化が実り、国民スポーツ大会の総合成績は、2022年と2023年が46位、2024年が44位と最下位に近かったが、昨年は28位と上昇。昨年12月の全国中学選抜U15選手権では、観堂幸夏(滑川ジュニア)が3位に入賞するなど、この世代で明るい兆しが見えてきた。

▲練習場所を提供してくれた富山第一高校の澤田孝之校長が、土日曜日にもかかわらず2日間とも姿を見せ、スタッフに感謝を伝えた

 角地山会長は「底上げが結果に表れています。これからも全日本のトップ選手を招聘して指導をお願いし、上を目指していきたい」と希望を話した。

 選手を派遣した三恵海運の藤本健太監督は「教えることは、教える選手にとっても技の確認になり、メリットがあります。今回は私たちにとっても、いい経験をさせてもらいました。富山県レスリング界の発展を期待します」とエールを送った。

▲練習を見守る富山県少年少女レスリング連盟の角地山豊会長(下の選手=観堂幸夏が笑っているのは、髙橋夢大選手が脇の下をくすぐっているかららしい…)


参加選手の声

 ■高岡ジュニア・寺下愛姫(中学2年:54kg級)「強い選手から多くの技を学べて、よかったです。特に、ローシングルのこつを1対1で教えていただいたことはうれしかったです。スパーリングでは、相手がとても強く感じました。もっと高いところを目指して頑張りたいと思います。全国大会で勝てるように頑張りたい」

▲藤本健太監督に挑む寺下愛姫選手

 ■富山第一クラブ・沖田偉風(中学3年:68kg級)「強い人やって、レスリングの強さはもちろん、レスリングを通しての人間性とかも学べたと思います。続けることの大切さ、今は勝てなくても続けていくことの大切さ、勝てなくても続けたことが自信になるなど、これからの人生に生かせることを学ばせてもらいました。技術的には、体幹の強さを感じました。もっと鍛えなければならないと思いました。レスリングは高校へ行っても続けます。全国優勝が目標です」

 ■滑川ジュニア・観堂幸夏(中学2年:85kg級)「充実した2日間でした。タックルの足さばきとか、取りやすい体勢を学んだことが大きかったです。スパーリングは圧倒されて、(相手は)岩石というより、黒曜石(こくようせき=火山岩の一種)でした。考えて攻撃しても、すべて読まれていました。乗り越えるには、毎日、強い選手と練習することだと思います。(3月の)U15全日本選手権に出られるので、優勝を目指します」

▲髙橋夢大選手に挑む観堂幸夏選手

 ■滑川高・濱岸参之介(65kg級)「(全日本トップ選手は)技の種類が多く、その面で大きく負けていると感じました。スピードもとても速かったです。カウンターもうまく、攻撃しても気がついたら脚を取られていた、という感じでした。学ぶことばかりでした。(追いつくには)毎日の練習をさぼらず、自分自身で追い込むことが必要だと思います。大きな目標はオリンピックですけど、まず全国大会での入賞を目指して頑張りたい」

 ■滑川高・吉田晴哉(80kg級)「技術面で参考になることばかりでした。自分の課題だった片足タックルからの処理についてをしっかり聞くことができ、とてもよかったです。スパーリングは、高校生とやるときに比べると大変で、息の上がり方がすごかったです。習った技術を日頃の練習で再確認し、自分のものにしていきたい。今年は、まず全国大会出場を目標にし、そこでベスト8以上を目指したい」

 ■桜井高・笹山千陽(65kg級)「高校生とスパーリングすることとは、全然違いました。力が違うのは当たりまえですけど、技術も全然違いました。タックルに入って力でねじふせる、ではなく、相手の動きに合わせてテークダウンをとるところがすごいと思いました。スパーリングをやりながらでも、教えてくれるところはしっかり教えていただきました。部員は2人しかいないのですが、高校最後の年になるので、教えてもらったことを生かして頑張りたい」

 ■桜井高・桶屋建瑠(60kg級)「打ち込みでは、今まで知らなかった動きを教えてもらい、いい経験になりました。ツー・オン・ワンからの攻撃でも、逆に相手に取られたときの対処の仕方などを学びました。技の引き出しが増えたと思います。今年は高校最後の年、まず北信越大会に出られるように頑張りたい」