2026.01.20

【特集】キッズ大会開催に挑む鏡優翔選手(サントリー)に聞く

 2024年パリ・オリンピック女子76kg級優勝の鏡優翔選手(サントリー)が2026年3月20日(祝)~22日(日)に、自身のプロモートによる「鏡優翔 SUNFLOWER CUP 2026 supported by SUNTORY」を地元の栃木県宇都宮市で開催する。現役選手が中心になって大会を開催するのは極めて異例。同選手は「キッズ選手が『もっと頑張りたい』と思うような大会を作る必要がある」と、選手兼主催者の“二刀流”に挑戦する。

 大会開催を控えた鏡優翔選手に聞いた。(聞き手=編集長・樋口郁夫)

▲2028年ロサンゼルス・オリンピックを目指しつつ、地元でのキッズ大会開催へ挑む鏡優翔(サントリー)


選手や保護者がワクワクしてくれるような企画も検討

--大会開催にいたった経緯を教えてください。

鏡優翔 オリンピックで優勝したあと、いろんなキッズ教室へ報告に行き、レスリングを教えてきました。そのうちに、キッズ選手の私を見る目がオリンピック前よりも違うことに気がつき、自分も、かつて吉田沙保里選手や伊調馨選手を見てあこがれたことを思い出しました。キッズ選手が「もっと頑張りたい」と思うようなきっかけを、もっと作る必要がある、と思ったことが最初のきっかけです。

 勝てなくなったり、メダルを手にすることができなくなったりで、やめていく選手は少なくないと思います。そういう選手にメダルを手にするチャンスを増やしてあげることが大事だと思います。大会をやりたいとX(旧ツイッター)でつぶやいたところ、見てくれた人から話がありました。下野新聞からも協力の申し出があり、大会開催に至りました。

--キッズの大会にかかわることは、オリンピックで金メダルを取った選手の義務、というくらいの気持ちでしょうか?

鏡優翔 義務というより、キッズ選手に自分が経験した景色を味わってほしいという気持ちです。もちろん、オリンピックを目指す子もいれば、レスリングを楽しみたいという子もいます。いずれにせよ、レスリングに親しんでほしい、という思いからの行動です。

--大会の冠である「サンフラワー(向日葵=ひまわり)・カップ」の意味は? 私は「カワイイ・カップ」でもいいのかな、と思いましたが…。

鏡優翔 最初は「サンフラワー・プリンセス・カップ」を考えました。でも、プリンセスをつけると女子に限定されるような気がしましたし、「カワイイ」にしても、男子選手は出られないのかな、というイメージが出てくるわけです。いくつかの案を検討し、特定のイメージや性別に限定されることなく、だれでも参加しやすく、前向きな気持ちになっていただけるものとして、最終的に「サンフラワー・カップ」としました。いつも上に向かって伸びるひまわりの花が大好きで、よく口にしています(関連記事)。太陽に向かってまっすぐ伸びるひまわりのように、競技に挑むすべての選手を応援したい、という思いを込めています。

▲上に向かって伸びる向日葵(ひまわり)のように世界一へ登り詰めた鏡優翔

ビギナーの部をつくり、メダル獲得の可能性を広げる」

--2028年ロサンゼルス・オリンピックを目指すわけですが、現役バリバリの選手が名前を貸すことはあっても、運営の中心となって大会を開催することは、あまりないと思います。そのあたりは、いかがでしょうか?

鏡優翔 やはり自分の理想とする大会を開催してみたいという思いからです。大会を開催するにあたって、いろんなことをやってみたい、という気持ちが強くあります。自分が現役選手として必死にやり、今回(全日本選手権)は負けてしまいましたが、選手からあこがれを持ってもらえるのなら、とてもうれしいと思いました。私が頑張ることで、キッズ選手も注目してくれると思います。現役選手が大会を開催するから意味がある、とも思っています。

--大会のときも、ひな壇に座って見ているだけではなく、選手に声をかける予定でしょうか。

鏡優翔 キッズ選手の闘いをマットサイドでしっかり見ようと思います。予算ほかの都合もあるので現段階で正式決定ではありませんが、会場ではいろんなブースを作り、選手との交流の場もつくる予定です。参加した選手や保護者がワクワクしてくれるような企画も考えています。選手の祖父母などの高齢者がマットサイドで試合を見られるようにし、多くの人たちとの交流ができるような大会を目指します。このあと詳細を煮詰め、2月中旬に発表する予定です。

▲“お爺ちゃん子”で、オリンピック金メダル獲得を見守ってもらった鏡優翔選手。キッズ選手に高齢者を敬う気持ちを求める=撮影・保高幸子

--試合形式は? 試合を多くやらせるためリーグ戦をやったり、団体戦を導入したりしている大会もあります

鏡優翔 トーナメント戦の予定です。ビギナーの部をつくり、キャリアの浅い選手もメダルを手にする可能性が大きい大会にしたいと思っています。メダルを手にすることで、「もっと頑張ろう」という気持ちになると思います。私も、メダルを手にしたうれしさがあったからこそ、そのあと頑張れました。小さなきっかけを選手に与えられるような大会にしたいです。

--ビギナーの部は中学生にも作るのですか?

鏡優翔 現段階では小学生だけの予定です。第1回大会なので、お試しという部分があります。まず今回の大会をスムーズにやって成功させ、出てきた課題を第2回、第3回に反映できるようにしていきたいと思っています。

地元密着の下野新聞が全面的に協力

--出場する選手や指導者に望むことは?

鏡優翔 とにかく楽しんでほしい、ということです。選手もご両親も、栃木に来て、サンフラワーカップに出て、「参加してよかった」と思ってもらえるような大会にしたいと思っています。勝った選手は「この大会に出てよかった」と、負けた選手は「また参加して、次は絶対にあのメダルを取りたい」と思ってもらえるような大会にしたいと思います。

--開催が3月の3連休、県によっては春休みに入っていますので、全国から来てほしい、というお気持ちでは?

鏡優翔 それを願って、全国に対して参加を呼びかけています。多くの都道府県から集まってくれれば、うれしいです。いずれは全国大会に近い規模の選手が集まればいい、と思っています。

▲2013年、全国少年少女選手権で4連覇を達成し、全国少年少女連盟の年間最優秀選手に選出された鏡優翔選手=撮影・矢吹建夫

--下野新聞が全面協力してくださるわけですね。それもオリンピックで金メダルを取った選手のネームバリューがあればこそですね。

鏡優翔 とてもありがたいことです。下野新聞では、すでに大会開催の記事を出していただきました。地元に根付いた新聞社で、地域の方々や企業との幅広いネットワークをいかし、多方面にわたって多大なるご尽力をいただいています。これまでの他競技で多くの大会を支援しており、その経験をもとにした豊富なノウハウをお伝えいただいています。心より感謝しています。

--栃木県のレスリングは、高校のチームや選手が少なくなって低迷していますよね(登録は、男子4校27選手、女子2校2選手)。栃木県でレスリングを始めた選手として、気がかりなのではないでしょうか?

鏡優翔 それはあります。キッズ・クラブも決して多くはありません(全国少年少女連盟への登録は8チーム)。この大会を機に、盛り上がってほしいと思っています。それも大会開催の要因のひとつです。

--ご自身の選手活動との兼ね合いが、やや心配ですが、いかがでしょうか?

鏡優翔 トレーニングはしっかり続けます。大会開催に協力してくださる方は、練習時間に影響のない時間に打ち合わせを実施するなど配慮していただいているので、選手活動に支障なくやっていけると思っています。今回の成績(全日本選手権決勝で敗れる)は、(オリンピック後の休養のあと)試合に向けての準備不足が原因で、この大会の開催に向けていろいろやってきたこととは無関係です。ただ、こうしたことをやる以上、よけい成績を出すことにこだわらなければならないと思います。練習に集中するだけの方が楽ですが、こうした活動をやりつつ勝ち続けることにも意味と意義があるわけで、両方の分野で頑張りたいと思っています。

--現役選手の新たな挑戦、ご健闘を期待しています。