2015年12月にスタートし、4シーズン行われながら金銭トラブルで中止となったインドのプロ・レスリング・リーグ(PWL)が今月、再開される。2017年は賞金総額300万ドル(約3億900万円=当時)で、それまでの最高だったゴールデン・グランプリ決勝大会(アゼルバイジャン)の総額42万ドル(約4,326万円)を大きく上回る世界レスリング界史上最高の賞金大会として存在した。
復活最初の今年は、開催の発表が11月中旬と急だったことで、現役の世界チャンピオンの参加はなく、2024年パリ・オリンピックのメダリストも5人にとどまった(各チームの登録選手 → クリック)。前回の最後の大会から7年がたち、現在の世界トップ選手には“未知の大会”という影響もあるだろう。今年の大会を成功させることが、来年から世界トップ選手が集う大会に発展していくと思われ、成否が注目される。
世界中の選手を引きつけるのは、ギャラ(出場料)の高さ。2017年大会では、2016年リオデジャネイロ・オリンピック・男子フリースタイル57kg級優勝のウラジーミル・キンチェガシビリ(ジョージア)が480万ルピー(約820万円)でスカウトされ、同オリンピック女子53kg級優勝のヘレン・マルーリス(米国)は460万ルピー(約785万円)だった。
高額すぎたためか、翌年からギャラの上限が定められたものの、ギャラに加え、チームが優勝すれば別に賞金が出るとあって、世界中の選手の目標のひとつの大会だったことは変わりない。最後の大会となった2018~19年大会には、2014年世界選手権・男子フリースタイル70kg級優勝のへティク・ツァボロフ(ロシア)、2017年世界選手権・男子フリースタイル61kg級優勝のハジ・アリエフ(アゼルバイジャン)、2017年世界選手権・女子53kg級優勝のバネサ・カラジンスカヤ(ベラルーシ)らが参加した。
再開された今年の大会は、各チームが2千万ルピー(約3478万円)の中で9~12選手と契約することになり、「ハリヤナ・サンダース」が獲得した須﨑優衣(キッツ)には大会史上最高となる600万ルピー(約1,043万3,700円)が支払われる。
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なお、同チームの本拠地であるハリヤナ州はインドの中で最もレスリング人気が高く、州政府によってレスリングが「State Game(州技)」に認定されている。インドの女子レスリング選手を扱った世界興行収入340億円超の映画「ダンガル」(インド映画の記録を更新)のモデルとなった2人の姉妹は、ハリヤナ州出身の選手。2018年に日本でも公開され、興行収入2億5,000万円を突破した映画だ。
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ギャラの問題のみならず、熱狂の会場で世界のトップ選手と闘うことで実力アップの場ともなる。2024年パリ・オリンピック・女子50kg級でインド初の決勝進出を果たしたビネシュ・フォガトは「この大会での経験は大きかった」とコメント。実力アップに役立つ大会であることを強調した。
インド国内での注目もすごく、テレビ格付け企業BARC India(注=日本でいう視聴率調査会社)によると、第3回大会(2017~19年)は36時間を超えるテレビ中継があり、視聴者はのべ8億5000万人(インドの人口は約13億2400万人)。インドの9パーセントの地域、ヒンズー語を話す47パーセントの地域で、カバディ(インドの人気競技)のリーグを超えた数字が出たとのこと。
同国で最も人気の高いスポーツはクリケット(野球の原型のスポーツと言われ、世界の競技人口はバスケットボールやサッカーに次いで2位、または3位と言われている)で、ホッケー、カバディが続くと言われている。レスリングは女子の普及と競技人口、メディアの注目と扱いが追いついてなく、インド・スポーツの顔にまではなっていないが、今大会のSNSを駆使した宣伝活動を見る限り、広報面でも大きく前進しているようだ。
今年の大会の成功は、レスリングを世界のメジャー・スポーツへ押し上げてくれるはず。注目されるインドPWL2026だ。