(文=布施鋼治)
「去年の天皇杯にもエントリーしていたけど、けがで出られなかった。実質、初めての舞台。優勝できてうれしい」
2025年全日本選手権・第1日(12月18日)に実施された男子フリースタイル79kg級は、ガレダギ敬一(早大)が、6月の明治杯全日本選抜選手権に続いて優勝。初の日本一に輝いた。早大選手の男子フリースタイルでの優勝は2015年の多胡島伸佳(70kg級)以来。
「明治杯後のプレーオフでは神谷龍之介(日体大)選手に負けて悔しい思いをした。もう絶対負けないように努力してきました。その努力が実ったこともで胸がいっぱいです」
プレーオフで敗れた後、ガレダギは自分に何が足りないのか、徹底的に見つめ直した。「自分には体力が足りていなかった。だから、まずは走り込みを始めました。フィジカル的にも問題があったので、専門の先生にメニューを組んでもらい続けました。途中で嫌なこともあったけど…」
具体的に「嫌なこと」とは?
「先輩にスパーリングで負け、『もしかしたら自分にレスリングは向いていないんじゃないか?』と思ったことが2~3回ありました。でも、そのたびにコーチや先輩が『お前ならできる』と励ましてくれたので、それが自信につながり続けることができたと思います」
今大会では、バランス感覚が突出していた。決勝では、過去一度も勝ったことがない山口叶太(中大)に片足タックルを取られた上に高く持ち上げられ、最低でもステップアウトで1点は失うであろう場面があった。しかしながら、ピョンピョン飛び跳ねながらバランスを維持し、結局失点することはなかった。
「あそこで失点しなかった要因? 気持ちですね(照れ笑い)。セコンドから『冷静でいろ』というアドバイスをもらいました。おかげで、ふだんだったらちょっと緊張してしまうけど、冷静に対処することができたと思います」
この優勝で、来年の世界選手権出場を決める闘いに一歩リードしたが、近い将来は階級転向も視野に入れる。
「将来的にはオリンピック階級に転向して、オリンピック優勝を目指したい。今のところ79kg級では体重が全然足りていないので、74kg級に下げようと思っています。具体的にいつからかは、まだ検討中ですけど」
父はイラン人、母は日本人という家庭に生まれ育った。3歳からレスリングをやり始めたきっかけは、「100%父親の影響」と話す。「お父さんも昔、イランでレスリングをやっていたみたい。高校のとき、(父の)里帰りに同行したときには、毎日現地のレスリング道場に連れていかれ、途中で帰りたくなりました(苦笑)。向こうにはコンビニ感覚でレスリング道場があるんですよ。父方の祖父母が住んでいるので、また行きたいですね」
レスリングを国技とするイランのDNAを受け継ぐ選手としては、今年のU23世界王者・吉田アラシ(日大)を筆頭とする吉田ファミリーが思い浮かぶ。ガレダギもこの家族から強い影響を受けているという。
「吉田ファミリーを意識しているというか、兄弟全員が強いので、尊敬しています。今日も吉田家のお父さんであるジャボさんにアドバイスもらって勝つことできました」
吉田アラシに続け-。ガレダギは、国内でも選手層の厚い74kg級の台風の目となるか。