パリ・オリンピック優勝の樋口黎(ミキハウス)と今年の世界選手権代表の坂本輪(CWC)のエントリーがなかった2025年全日本選手権・男子フリースタイル57kg級。エントリーした2024年世界選手権61kg級優勝の小野正之助(NLWC)も負傷で棄権し、本命不在となった闘いを制したのは、国民スポーツ大会2位の小川大和(日体大1年)。「死ぬ気で練習をやってきて、本当によかったです」と、19歳での日本一到達を喜んだ。
決勝は、全日本選抜選手権の初戦と国民スポーツ大会の決勝で敗れていた佐々木風雅(自衛隊)が相手。第1ピリオドを0-5とリードされ、苦しい展開となった。国スポでの対戦では1点も取れなかっただけに(0-7のポイント負け)、敗戦濃厚とも考えられる状況だったが、場外ポイントで1点を返して気持ちは負けていないことをアピール。相手にパシビティーを与えたあとのラスト1分30秒ころ、4点となる投げ技で5-5の同点へ。
4点技があるので自分有利の同点だが、アクティブタイムの1点が入って6-5とリード。それでも、テークダウンを取られれば逆転される状況だけに、最後まで気をゆるめることなく闘い、佐々木の反撃をしのいだ。
5点差をつけられても、「絶対に取り返す、という気持ちでした」と劣勢だったときを振り返り、「日体大の高いレベルで、すごい指導者や先輩のもとで練習しています。それはどこにも負けないことだと思います。5点差をつけられても、絶対に取れるという強い気持ちがありました」と胸を張る。日体大の「最後まで攻める」という精神のおかげという意味の言葉を繰り返し、気持ちで負けていなかったことを強調した。
5-5になったあとも追加でポイントを取って勝利を確実にする必要があったのに、それができなかったことは反省材料。「今後の課題です」とも話し、勝つだけではなく、内容にもこだわる姿勢も見せた。
長崎・島原高時代の2023年にU17世界選手権優勝、2024年にインターハイ優勝と実績は十分。昨年の全日本選手権は2回戦敗退、今年6月の全日本選抜選手権は佐々木相手に初戦敗退と、シニア・レベルでは壁にぶつかったが、全日本学生選手権と全日本大学選手権はともに3位。1年生としては順調な結果を残していた。
この大会の準決勝では、全日本学生選手権で負けていた弓矢健人(日体大=学生王者)を破っていた。佐々木を含めてWリベンジを果たしての優勝となり、大きなステップアップを成し遂げた。樋口黎が復帰し、坂本輪や小野正之助の参戦も予想される来年5月の明治杯全日本選抜選手権での挑戦が楽しみになったと言えるだろう。
樋口とは日体大の練習場で何度も闘っている。レベルの差は感じるようだが、「絶対に勝つ、という気持ちでぶつかっています」と語気を強める。小野とともに、「すぐに勝つのは難しいかな、とは思いますが…」と前置きしながら、「今回見つかった課題をひとつひとつクリアしていけば、絶対に勝てると思っています。ぶれることなく、1日1日を大切にして練習していきたい」ときっぱり。
日本の期待階級に、また一人、逸材が加わりそうな雰囲気となった。