パリ・オリンピックの代表選考がかかった2023年天皇杯全日本選手権には、まったくの中立の立場からの公正な審判と、国内における女性審判員育成のため、韓国の国際審判員の一人、リ・ジウ(Lee Ji-Woo)審判員を招へいし、ホイッスルを吹いてもらった(関連記事)。
今年の大会にも、2人の外国人審判の姿があった。一人は、台湾で11人いる国際審判の中で唯一の1S級審判であるクアン・チーウェイ(KUAN Chih-Wei)審判員。もう一人は女性審判員のローラ・ロペス・セパロ(米国=LOPEZ CEPERO Laura)国際2級審判員。日本協会の沖山功審判委員長(香川・中部支援学教)は、前回と同じく中立な立場でのレフェリングのほか、「日本の国際審判の英語力向上のために参加いただきました」と説明した。
クアン・チーウェイ審判員は、2015年アジア選手権(カタール)に選手として参加したことがあり、その後、審判の道へ。2023年アジア大会(中国)の審判に選ばれている。一昨年、昨年と自費で全日本選手権を見に来ていたそうだ。日本のレスリングのレベルの高さにひかれていたところ、沖山審判委員長から声をかけられ、試合を裁くことになった。
実際にレフェリングをしてみて、「100パーセント、世界最高レベルのレスリングが展開されています」との感想。オリンピック・チャンピオンの試合のレフェリーを数多くこなし、「とてもいい経験になり、いろんなことを学んでいます」と言う。
オリンピックを裁ける1S審判に昇格したのが2023年12月。そのときは、すでにパリ大会の審判は決まっていたので、2028年ロサンゼルス・オリンピック参加を目指している。「たくさんの経験を積みたいです」と言う。
ロペス・セペロ審判員は、夫の仕事の関係で英国やポルトガルでも審判活動を行っていた。今年11月、夫の青森・三沢市の米軍基地への赴任を機に来日。いいタイミングで全日本選手権があり、参加することになった。初めて接した日本のレスリングは「レベルが高くて素晴らしい」と言う。その中でレフェリングできることに、やりがいを感じるとともに、「見ることでも楽しんでいる」と満足そう。
日本人審判に囲まれ、英語がスムーズに通じない状況もある中でのレフェリングとなるが、「レスリングは万国共通です。ポイントに変わりはないので、言葉の問題はあまり関係ありません」と言う。それがレスリングを好きになった理由でもあると説明した。
レスリングと接したのは、中学生のとき、友達がレスリングで挑んできたことがきっかけだった。そのときはやられてしまったそうだが、面白さを感じてレスリングを始め、生活が変わって「レスリングに人生を救われた」と言う。選手を終えたあと、コーチを経て審判資格を取り、「レスリングに恩返しをしています」と言う。
日本での生活は、始まったばかり。「親切な人が多く、食べ物はおいしい」と気に入った様子だが、来日した夜に地震に見舞われ、「びっくりした」。夫の任期は約3年の予定。その間も審判活動の経験を積んで1級に上がりたい気持ちを持っているが、「まだ多くのことを学ばないとなりません」と焦らずに上を目指す。世界のトップ選手の試合をさばける日本の環境は願ってもないこと。来年も、主要大会でその姿が見られるかもしれない。
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