来年度の西日本学生レスリング連盟の役員が決まり、委員長には3年連続で女子学生(松村祐里さん=関大)が就任することになった。そのスタートである2024年に13年ぶりの女性委員長に就任したのが、西留萌々花さん(にしどめ・ももか=当時帝塚山大=関連記事)。今回の秋季リーグ戦には勤務先の福岡県から駆けつけ、母校の応援をするとともに、学連の仕事をボランティアでアシスト。卒業して1年近くがたつが、レスリングへの変わらない愛情を見せていた。
委員長だったときを振り返ってもらうと、「選手がしっかり試合に集中できるように気を配ってきました」と、アスリート・ファーストに徹して運営をしてきたとの思いがある。
学生連盟に入って活動をしたことで、選手を相手にすることのみならず、他大学の役員や指導者など多くの人と接し、いろんな経験をして人脈ができた。常に周囲に気を配って行動をするようになり、それが「卒業後の生活に役立っている」と言う。
周囲への気配りを、小学校の校長先生が認めてくれ、声をかけてもらったそうで、「学連で活動してきて本当によかった、と思います」と振り返る。
国内のみならず世界のレスリング界で、男女平等の実現は差し迫った課題であり、すぐに実現しなければならない重要な案件。西日本学生連盟は、2022年に16人中11人(69%)が女子委員だったなど、女性の進出を国内で最も推進している連盟。西留さんの就任によって、その流れが勢いづいたのは間違いないだろう。
「13年ぶりの女性委員長と聞いて、この流れを広げていければいいな、と思いました。連盟の仕事は女性も活躍できる場だと思います」と言い、卒業後もその流れが続いていることに、うれしさを感じているようだ。
大阪市生まれ。両親が柔道をやっており、弟とともに高校まで柔道をやっていた。進学した帝塚山大に柔道部がなかったため、柔道部の顧問だった西日本学生レスリング連盟の漆原功二・総務副委員長に勧められてレスリングのマネジャーとして入部。学生連盟にも加わり、「人の役に立つことが好き」とのモットーで熱心に仕事をこなしてきた。
柔道をやっていたときも黒帯へのあこがれが強いなど、小さい頃から、やる以上は上を目指す気持ちが強かった。学連の仕事も慣れた2年生の後半あたりから、「一番上に立って連盟を運営したい」という気持ちが芽生え、学連委員長になることを目標に奮戦。「周囲に気を配りつつ、自分から積極的に行動しましたね」。その努力が認められ、13年ぶりの女性委員長に就任した。
今年3月に帝塚山大を卒業し、故郷・大阪を離れて福岡県で小学校(久留米市立安武小学校)の教員としてスタートした。現在の教員といえば、長時間労働やモンスターペアレントからのクレームに悩まされるなど、大変な職業とも思われている面もある。勤務先の学校は落ち着いていて、平日は残業があって仕事を家に持ち帰ることはあっても、土日曜日に勤務することはなかったそうだ。
2年生の担任で、「勉強を教える難しさはあります。学習能力に個人差があり、みんなに理解してもらうことに大変さを感じます」といいながら、「やりがいを感じて働いています」という生活。子供が「学校を楽しい」と思えるようになれば、保護者も安心し、先生を信頼してくれることを感じたので、楽しい学校生活が送れるよう気をつかっていると言う。
レスリングの指導者ではなかったので、地元のレスリング・チームにタッチすることはないが、西日本学生の大会があるときは、今回のように里帰りを兼ねて大阪まで足を運び、母校のレスリング場にも顔を出す。
今年7月に帝塚山大の指導もしている鈴木貫太郎・三恵海運コーチが現役選手をつれて福岡大に指導に来たときには顔を出した。昨年まで連盟会長だった吉武行寛・福岡大GMが、福岡県出身の同期生で副委員長をやっていた野中ひかりさん(当時大体大)とともに食事に呼んでくれ、学生時代の縁によるつながりを続け、「やはり、レスリング界の動向は気になります」と言う。
「学生時代の思い出の8割以上はレスリングです。レスリングからは離れられないですね」。母校の帝塚山大は今大会で部史上最高の5位に躍進。「いつか優勝してほしい。優勝の感激を味わいたいです」と力強く話した。