※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
新体制の強化委員長就任のあいさつをする栄和人委員長(右端)
練習に先立ち、高田裕司強化本部長(山梨学院大教)が、男子の合宿の時と同じく味の素トレーニングセンター内での行動や礼儀を厳しく指導。留任となった栄和人・女子強化委員長(至学館大教)が、笹山秀雄強化委員(自衛隊)をヘッドコーチ的な立場とし、通常の練習の指揮を執ってもらうことを伝えた。
同委員長は報道陣に「ロンドンで金メダル3個を取って、『よかったね』と言われることが多かった。しかし、全階級で金メダルと思っていたし、メダルを逃した浜口京子選手が金メダルを目指していて、それを達成できなかったのだから、満足はしていない。リオデジャネイロ・オリンピックでこそ金メダル4個を目指してチームを育てていきたい」ときっぱり。
■体罰・パワハラは絶対禁止!
最近スポーツ界をにぎわしている体罰、パワハラ問題にふれ、「(体罰ではなく)言葉で育つ選手をつくらないとならない。その結果、甘える選手が育つようなら、自分達の指導能力がないことになる」と話した。
コーチのミーティングでも徹底したそうで、「どうしても言葉では言うことをきかない選手がいるようなら、手を出すのではなく、自分のところに報告させ対応する。自分もそういう選手に遭ったら、他のコーチと話し合う」と、コーチ全員の問題として体罰・パワハラ問題に取り組む姿勢を示した。
現場指揮の長に任命された笹山秀雄・強化委員
アジア選手権に監督として同行する木名瀬重夫・日本協会専任コーチは、今回のアジア選手権は「勝つためにはどうしたらいいかを、とことん考えさせる」と話した。これまで大会に臨むにあたっては、「全力を尽くせ」と伝えてきたが、「全力を尽くすのは当たりまえ」と言う。そうした抽象的な言葉ではなく、勝つための具体的なイメージを持たなければならないという。
「選手とコーチが試合前にしっかりと話し合い、イメージを共有する。勝つために同じ方向を向き、それに向かって勝ち方を試合で出せるようにしたい」と話し、ワンランクアップの姿勢を求めた。
■若手の挑戦受ける吉田、全開はもう少し先の伊調
昨年9月の世界選手権(9月)以来の全日本チーム合流となった吉田は、今年3月から本格的に汗を流し始めたという。「体は少しずつ戻ってきている」そうで、この合宿では、今後のライバルとなる村田夏南子(日大)や浜田千穂(日体大)の全日本1、2位の選手とも熱い練習を展開。
スポーツキャスターの高橋尚子さん(元マラソン選手)の前でスパーリングを展開する吉田沙保里と村田夏南子
伊調は、2008年北京五輪のあとは、約1年間、カナダに留学し、第一線から離れた。今回も、そうしたリフレッシュも考えたそうだが、「留学はレスリングをやり切ってからでもできる。今はレスリングをしっかりやりたい」と、早々とマットへの復帰を決め、全日本チームへの合流となった。
2月初めに痛めていた左足首の手術を受けた。ようやくリハビリ期間が終わった段階で、「まだ本格的な練習ではない。慎重にやっていきたい」。この日は63kg級のアジア選手権代表の伊藤友莉香(自衛隊)に技術指導をすることが多く、間違いなくライバルになるであろう選手であるにもかかわらず、“チーム・ジャパン”の立場に立った行動を見せた。
6月の全日本選抜選手権は、足首の状態と「気持ちが上がっていけば…」と、心身両面の出来上がり次第で出場の可能性を示唆した。しかし、「リオデジャネイロへの思いは?」との問いには、「遠い、というイメージしか湧きません。地球の裏側。行くとしたら、オリンピック以外で行くことはないでしょう」と話し、報道陣を笑わせた。
合宿は13日まで行われ、アジア選手権代表チームは15日に出発する。
![]() 約半年ぶりの全日本チーム合流の吉田沙保里 |
![]() アジア選手権代表の伊藤友莉香に技術指導をする伊調馨 |
![]() 今年3度目の国際大会(アジア選手権)に挑む72kg級の鈴木博恵(クリナップ) |
![]() 初のアジア選手権出場に燃える48kg級の鈴木綾乃(ジャパンビバレッジ=2007年アジア・カデット・チャンピオン) |