2013.04.09

五輪金メダリストが参戦…全日本女子チームが合宿スタート

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

アジア選手権(4月18~22日、インド・ニューデリー)の代表選手を含む全日本女子チームが4月8日、今年度最初の合宿をスタート。ロンドン五輪優勝の吉田沙保里(55kg級=ALSOK)、伊調馨(63kg級=同)も参加した。新強化体制のスタートということで、報道陣に練習を公開した。

 練習に先立ち、高田裕司強化本部長(山梨学院大教)が、男子の合宿の時と同じく味の素トレーニングセンター内での行動や礼儀を厳しく指導。留任となった栄和人・女子強化委員長(至学館大教)が、笹山秀雄強化委員(自衛隊)をヘッドコーチ的な立場とし、通常の練習の指揮を執ってもらうことを伝えた。

 同委員長は報道陣に「ロンドンで金メダル3個を取って、『よかったね』と言われることが多かった。しかし、全階級で金メダルと思っていたし、メダルを逃した浜口京子選手が金メダルを目指していて、それを達成できなかったのだから、満足はしていない。リオデジャネイロ・オリンピックでこそ金メダル4個を目指してチームを育てていきたい」ときっぱり。

■体罰・パワハラは絶対禁止!

 最近スポーツ界をにぎわしている体罰、パワハラ問題にふれ、「(体罰ではなく)言葉で育つ選手をつくらないとならない。その結果、甘える選手が育つようなら、自分達の指導能力がないことになる」と話した。

 コーチのミーティングでも徹底したそうで、「どうしても言葉では言うことをきかない選手がいるようなら、手を出すのではなく、自分のところに報告させ対応する。自分もそういう選手に遭ったら、他のコーチと話し合う」と、コーチ全員の問題として体罰・パワハラ問題に取り組む姿勢を示した。

レスリングの2020年五輪競技からの除外問題は、選手の気持ちに影響を与えているのは間違いない。しかし、「まだ決まったわけではない」として落ち込まずに努力することを求め、万が一除外となっても、「世界選手権を目指して頑張ってほしい。自分達は女子がオリンピック種目でない時から世界で勝つことを目標にやってきて、その結果がオリンピックの勝利につながった」と話した。

 アジア選手権に監督として同行する木名瀬重夫・日本協会専任コーチは、今回のアジア選手権は「勝つためにはどうしたらいいかを、とことん考えさせる」と話した。これまで大会に臨むにあたっては、「全力を尽くせ」と伝えてきたが、「全力を尽くすのは当たりまえ」と言う。そうした抽象的な言葉ではなく、勝つための具体的なイメージを持たなければならないという。

 「選手とコーチが試合前にしっかりと話し合い、イメージを共有する。勝つために同じ方向を向き、それに向かって勝ち方を試合で出せるようにしたい」と話し、ワンランクアップの姿勢を求めた。

■若手の挑戦受ける吉田、全開はもう少し先の伊調

 昨年9月の世界選手権(9月)以来の全日本チーム合流となった吉田は、今年3月から本格的に汗を流し始めたという。「体は少しずつ戻ってきている」そうで、この合宿では、今後のライバルとなる村田夏南子(日大)や浜田千穂(日体大)の全日本1、2位の選手とも熱い練習を展開。

 「去年は、私がオリンピックを控えているということもあってか、遠慮していたようだ。今回は本気になって向かってきている。負けられないという気持ちが湧いてきた。やっぱり、私って負けず嫌いなんですね」と、気持ちも燃え上がってきていることを強調。「愛知に帰れば、川井(梨紗子=ジュニアクイーンズカップ優勝)も坂上(嘉津季=全日本3位)もいる」と話し、若手と競うことが楽しそう。

 伊調は、2008年北京五輪のあとは、約1年間、カナダに留学し、第一線から離れた。今回も、そうしたリフレッシュも考えたそうだが、「留学はレスリングをやり切ってからでもできる。今はレスリングをしっかりやりたい」と、早々とマットへの復帰を決め、全日本チームへの合流となった。

 2月初めに痛めていた左足首の手術を受けた。ようやくリハビリ期間が終わった段階で、「まだ本格的な練習ではない。慎重にやっていきたい」。この日は63kg級のアジア選手権代表の伊藤友莉香(自衛隊)に技術指導をすることが多く、間違いなくライバルになるであろう選手であるにもかかわらず、“チーム・ジャパン”の立場に立った行動を見せた。

 6月の全日本選抜選手権は、足首の状態と「気持ちが上がっていけば…」と、心身両面の出来上がり次第で出場の可能性を示唆した。しかし、「リオデジャネイロへの思いは?」との問いには、「遠い、というイメージしか湧きません。地球の裏側。行くとしたら、オリンピック以外で行くことはないでしょう」と話し、報道陣を笑わせた。

 合宿は13日まで行われ、アジア選手権代表チームは15日に出発する。

約半年ぶりの全日本チーム合流の吉田沙保里

アジア選手権代表の伊藤友莉香に技術指導をする伊調馨

今年3度目の国際大会(アジア選手権)に挑む72kg級の鈴木博恵(クリナップ)

初のアジア選手権出場に燃える48kg級の鈴木綾乃(ジャパンビバレッジ=2007年アジア・カデット・チャンピオン)