東京開催の2025年デフリンピック。レスリング競技に初めて日本選手が参加したが、試合を裁いた日本の審判員(全員が国際審判員)もデフ・レスリングは初めての経験であり、どの審判員も最初のマットのときには緊張感がただよっていた。
「通常の世界大会ほど技術レベルは高くないので、難しくない」との情報が流れていたようだが、展開されている試合は、どの審判員員も驚くほどレベルの高い試合続き。勝利を目指してエキサイトする様子も随所に見られ、選手の熱さにも驚きがあった。
大会前の審判会議で、普通の試合と何が違い、何を気をつければいいのかの説明があり、そのひとつが、ブレークするときは、できるだけ選手に近づき、選手の体を強くタッチすること。普通の試合なら、ホイッスルが鳴れば選手が動きをやめるが、それでは伝わらないので、しっかりタッチすることが必要。
頭では分かっていても、いざその場面に遭遇するとホイッスルを吹くだけになってしまっうケースもあった様子。世界レスリング連盟(UWW)のインストラクターの小池邦徳審判員は、GMを務める天理大レスリング部に、この大会に出場した久米田忠裕(3年)を抱え、聴覚障がい選手とは日常的に接しているが、その人をもってしても戸惑うことがあったそうで、審判員は全員が同じような経験をしたのではないか。
だが、技術レベルの高い国際審判ばかりなので、そのあたりの対応力は十分。3日目、4日目と経験を重ねるうちに、どの審判員もしっかり対応できていた様子。この大会を機にデフ・レスリングが日本でも認知され、普及する可能性もあるが、今回の経験によって、国内で大会をやることになっても審判の人材は確保されたと言える。世界デフ・レスリング選手権への派遣要請があれば、それにも対応できそう。
日本でデフ・レスリングを本格的にスタートさせるベースはできた日本開催のデフリンピックだった。