中邑真輔が世界最大のプロレス団体WWEで活躍。2022年にフリースタイルで世界王者に輝いた成國大志(東京・文化学園大杉並高監督)がグレコローマンの世界王者を目指して奮戦するなど、青山学院大出身のレスリング選手が世界へ飛躍している中、成國と同期でMMA(総合格闘技)へ進んだ澤田千優(ちひろ=TEAM AKATSUKI)も、世界チャンピオンへの道を突き進んでいる。
11月16日に東京・有明アリーナで行われた東南アジアを中心に活動する格闘技団体「One Champiosnhip 173」で、2019年から同団体で闘っている柔道出身の平田樹(フリー)とアトム(52.2kg)級で対戦。5分3ラウンドの大半で主導権をにぎり、相手に何もさせないまま判定勝ち。
パンチやキックの打撃をかいくぐってのタックルからのテークダウンがさえたのは、レスリング出身選手ならではの突破口。上から、あるいはバックマウント(レスリングでいうパーテールポジジョンからの攻撃)からのパウンド(グラウンド時に放つパンチ)やひざ蹴りを連発。
第2ラウンドでのパウンドの連打のときは、「止めてくれ」と訴えるような表情でレフェリーを見つめるほど。結局、KOやギブアップによる一本勝ちはならなかったが、ワンサイドと言っていい内容での快勝だった。
澤田は試合後、「Oneで初めてのナンバー大会(後述)、初めての日本での大会だったので、いい緊張感があった一方で、舞い上がってしまった反省点もあります」と第一声。やってきたことと、やりたかったことが噛み合わない面があったそうで、一本勝ちできなかったことともに、今後の課題を挙げた。
相手の平田樹は、澤田の組み合ったときの強さを認め、「レスラー(元レスリング選手)と闘うのは初めて。レスラーとの試合はこうなるんだな、と思いました」と話し、レスリング出身選手ならではの組み合いの強さに舌を巻いた。
澤田はこの大会以前に、米国配信のためにつくられた「One Champiosnhip Fight Night」に出場し(すべて海外での試合)、5試合で4勝1敗の成績。今大会は当初、平田の相手がリトゥ・フォガット(インド)だったが、フォガットが負傷で出場できなくなり、2週間前にオファーを受けての急な参戦だった。
調整期間が短すぎるとも思われたが、“本戦”と言える「One Champiosnhip」ナンバー大会の参加に気持ちは高揚。「いつ、どんなときでも試合ができるように日ごろから準備していました」と話し、コンディションは問題なかったことを強調した。
同級5位にまで上がっていたランキングは、この勝利で上へ行く可能性があり、世界チャンピオンが見えてきた状況。同3位には日本の三浦彩佳(Tribe Tokyo MMA)が入っており、王座を視野に入れている。三浦がチャンピオンになる前か後かはともかく、「ぜひ、やりたい」と話した。
澤田は東京・AACC~埼玉・埼玉栄高~青山学院大でレスリングを続け、インターハイ2位、アジア・ジュニア選手権優勝、全日本学生選手権2位などの成績を残し、卒業後、MMAへ。2021年5月に日本の総合格闘技団体「修斗」でデビューし(関連記事)、2022年11月に無敗のまま女子アトム級王座を獲得した。現在は修斗王座を返上し、世界を視野に入れている。
2020年3月に青山学院大を卒業した同期の成國大志は、この日、有明アリーナから直線距離で約2kmの場所にある都立三商高体育館で、文大杉並高の監督として全国高校選抜大会につながる東京都高校新人大会に参加していた(関連記事)。澤田の勝利と飛躍の予感を聞いて、「学生時代はいろいろ迷惑かけて申し訳なかったけど、お互いに自分の夢に向かって頑張ろう」とエールを送った。
澤田のMMAと成國のグレコローマンの「世界チャンピオン争いの競演」は、「駅伝の青山学院大」の名声をしのぐか!
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