11月1日から至学館大・栄和人記念レスリング場で行われている発展途上国の選手を中心とした女子の世界合宿は、今後、年2回程度の頻度で実施を企画していることが分かった。至学館大の谷岡郁子学長(日本レスリング協会名誉副会長)が明らかにした。
昨年のパリ・オリンピックまでは、世界レスリング連盟(UWW)がパリに男女3スタイルの練習拠点をつくり、国際オリンピック委員会(IOC)の経済的な支援を受けて、財政面で余裕のない国の選手を集めて指導・合宿を実施。レスリングの世界的普及に尽力してきた。
男子は2028年ロサンゼルス・オリンピックまでパリの拠点で続けることになったが、UWWから「女子は至学館大でやってもらえないか」との打診があり、谷岡学長が女子のさらなる発展を目指してその要望を受諾した。
同大学は、これまでにも多くの国・地域を受け入れてきた。米国、スウェーデン、ノルウェー、カナダ、ドイツ、モンゴル、グアムなど、一度でも至学館大で汗を流した選手の国を列挙すれば30ヶ国強になるほど(関連記事)。
レスリング場から徒歩数分の合宿所には部屋に余裕があるので、宿泊場所を提供(今回の世界合宿も、選手は全員が合宿所泊まり)。ロシアのウクライナ侵攻が始まった直後には、ウクライナの女子チームを呼び、宿泊と食事にかかる経費を大学、レスリング部、大府市の支援者によってまかない練習を支援した(関連記事)。先月も台湾、インド、モンゴル(栄和人総監督)のチームを受け入れたばかりで、国際交流と他国・地域のレベルアップに貢献してきた。
今回の世界合宿は、IOCとUWWの支援のもと、アフリカや中南米の財政的に自国で移動費や滞在費の支出が難しい国・地域が来日。至学館大が男女のオリンピアンに講師をお願いし、強化をはかった。
谷岡学長は、もう日本が金メダルを独占することを喜ぶ時期ではないことを強調。「それではオリンピック競技としての存在が問われる。多くの国がメダルを分け合う状況にならなければ、(2013年に続き)オリンピック競技からの除外危機に見舞われる」と警鐘を鳴らす。
来年は名古屋市でアジア大会が行われる。その前に東南アジアの発展途上国を招待しての合宿も計画に挙がっており、日本のノウハウを伝えてアジアの普及とレベルアップに貢献する予定という。
日本女子を最強に育てた至学館大が、UWWと協力し、世界の女子レスリングの普及と発展に全力を尽くす。