昨年のパリ・オリンピック女子53kg級で優勝し、57kg級へ上げて今月のU23世界選手権(セルビア)を制した藤波朱理(日体大)が来春の卒業後、株式会社レスターに入社してレスリング活動を続けることになり、10月30日、都内の同社本社で入社内定発表が行われた。
145連勝の白星街道をひた走るレスリング界のスターだけに、40人を超える報道陣が集まった。これまで日体大のコーチだった父の藤波俊一氏も来春から同社レスリング部監督へ就任することになり、会見に出席。今野邦󠄁廣󠄁・代表取締役会長CEO(専大レスリング部OB=1960年ローマ・オリンピックの代表候補)、林眞一・代表取締役社長COOの会社のトップも参列し、会社としての期待の大きさをうかがわせた。
藤波は、レスターの企業理念が「常に高い目標を掲げて、革新的な発想と情熱で、挑戦し続けます」であることを説明し、「私も同じように、常に高い目標に向かって情熱を持ち、日々、挑戦しています。今後は階級を上げて、57kg級でのアジア大会優勝、ロサンゼルス・オリンピック優勝を目標に、レスターとともに挑んでいきたいと思います」とあいさつ。
「レスリングを通して、多くの皆さんに生きる活力と、一歩踏み出す勇気を与えて社会貢献ができるように励んでいきます」と続け、現状に満足することなく、さらなる高みを目指して進化し挑戦していくことを宣言した。
他にレスターを選んだ理由として、同社はこれまでにも長年にわたってレスリングを支援しており、競技に対する深い理解と真摯な姿勢があり、試合会場での熱い声援に接していたことや、会長がレスリング経験者であることも大きな要因とし、「競技に対するパートナーを得られたと感じています」と説明した。
今後も練習は日体大を中心に行う予定だが、授業の制約がなくなることで、藤波・新監督は他チームでの練習のほか、海外での合宿練習も視野に入れていく予定を明らかにした。藤波本人は米国やロシアで盛んに行われているレスリング・イベントへの参加にも関心があり、機会があれば出場を目指す。最近、国際舞台で強大な勢力となっている北朝鮮選手とも「ぜひ闘ってみたい」と話した。
競技を離れての面でも、藤波は「会社のイベントには積極的に参加したい。社員として多くの経験を積み、教えてもらい、社会人としても成長したい」と話し、今野会長CEOは藤波・新監督に対し、「レスリングと共通する面で社員の教育もお願いしたい。レスリングを通じた社員教育は、大きな意義があると思う」と話し、企業の成長に貢献してくれることを望んだ。
今野会長CEOは「私も70年前、レスリングに接した。長い歴史の中で多くの選手との出会いがあったが、藤波選手のようなバランスがとれ、人間的にもしっかりし、高い向上心をもっている選手を見たことがない。ひと目で、この選手を当社に入れられないかと思って関係者にお願いし、この結果になったことをうれしく思っています」と話した。
今後、さらにいい成績を挙げられるよう、会社を挙げて万全の体制でバックアップしていくことを明言。「それによって社員の大きなモチベーションになると思います」と期待した。