※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
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応援に来た姉・千春さんから祝福される伊調
【イスタンブール(トルコ)、文=池田安佑美、撮影=矢吹建夫】頭突きや目潰し攻撃に耐えて勝ち取った世界一だ! 女子63㎏級は伊調馨(ALSOK)が6試合を勝ち抜いて45選手の頂点に立った。これで、7度目の世界チャンピオンに輝くとともに、ロンドン五輪での3連覇の最初の関門である、五輪出場枠を確保した。
昨年は北京五輪後初の世界選手権に出場し、当然のようにチャンピオンに返り咲いた。今大会は今までとは違う試練が課せられた。ひとつは出場選手の増大が挙げられる。昨年は28選手エントリーで、今年は約45選手が出場。「前半のセッションで5試合やったのは初めて」と、6タイムスチャンピオンの伊調でさえ体力の消耗は激しく、「省エネの試合をしてしまった」と、体力がものを言うトーナメントだった。
初戦の2010年アジア大会優勝のイェレナ・シャリギナ(カザフスタン)戦では、相手の頭突きで鼻を強打。準々決勝の中国戦では、偶然に相手の指が伊調の目をヒット。北京五輪後、練習環境やレスリングスタイルを変えて「自分のレスリングを確立したい」はずだったが、以前のように前半は様子を見て、終盤に仕掛けるスタイルになってしまった。「昔の自分に戻ってしまったみたい」と伊調自信もこの内容に満足した様子はなし。
決勝でサスティン・マリアンナ(ハンガリー)をストレートで下すと、派手なパフォーマンスはなく、口を真一文字に無心だままだった。「課題は大きいです。やりたいことがやれなかった」と悔しがった。内容だけ見ると全試合無失点と昨年よりもスコアよいのに、伊調の表情は晴れない。
今シーズンは海外遠征も今までで一番こなし、国内1大会を入れて5回目の大会出場となる。今回、男子グレコローマンの主力選手が国際大会の経験値不足で負けてしまった。「勝負のためには、いろいろ(なやり方が)ある」と前置きした上で、「結果が出たので、今シーズン、試合を多くこなせたことはよかったと思う」と話した。
「ロンドン五輪での目標は金メダルですけど、それ以上に一番楽しいレスリングを見せたいです」。自身のレスリングの完成を高めることを最大の目標に掲げて精進すれば、必ず五輪3連覇の道は開いてくるはずだ。