2025.10.14

エジプト希望の星が引退を撤回し、米国へ帰化して2028年ロサンゼルスを目指す

 エジプトの日刊紙「Ahram」電子版は10月8日、2021年東京オリンピックの男子グレコローマン67kg級で銅メダルを取り、今年7月に引退を表明したモハメド・イブラヒム・エルサイード(エジプト)が米国の国籍取得を進めており、2028年ロサンゼルス・オリンピックに米国代表としての出場を目指していることを報じた。

 同選手は、2016年に18歳でアフリカ選手権で勝ち、以後、2度のアフリカ大会を含めて8度のアフリカ・チャンピオンへ。U23世界選手権でも2度、世界軍隊選手権でも1度優勝。東京オリンピックでの銅メダル獲得は、エジプト選手として8人目のメダル獲得。アフリカ期待の選手だった。

 パリ・オリンピックは初戦で前年世界2位のアゼルバイジャン選手に敗れて上位入賞はならず。27歳になった今年7月、自身のインスタグラムでケガを理由に引退を発表した。

 ケガは表向きの理由だったようで、今回、「エジプトという国自体には何の問題もありません。私はここで育ち、多くのタイトルを獲得し、誇りを持って国旗を掲げてきました。しかし、問題はエジプトのスポーツ運営にあります。私は度重なる無視と約束の破棄に直面してきました」と心境と実情を吐露。エジプト・スポーツ界あるいはレスリング界への不満が根底にあることを説明した。

▲米国の国籍取得へ向けて動いているアフリカ期待の星、モハメド・イブラヒム・エルサイード(エジプト)=UWWサイトより

 国からの資金援助とトレーニングに必要な環境へのアクセスが十分ではないほか、国を代表する選手であるにもかかわらず、国からの支援は1ヶ月1,500エジプトポンド(約4,800円)であると明かした(注=2024年のエジプトの平均月収は約9,000エジプトポンド=約2万6,190円)。

 2019年に企業とスポンサー契約を結んだものの、強化費を直接受け取ったことはなく、渡航費やトレーニング費用は自費で負担せざるを得なかったと主張。「長年にわたる不当な扱いを受けてきたので、もうエジプト協会役員の言うことを聞くつもりはありません」とコメントしている。

 現在、米国を拠点に個人でトレーニングしているという。国籍変更には種々の手続きが必要なことに加え、米国への帰化には永住権を取得し、5年以上の居住などの条件を満たした上で、英語力や米国の歴史や政府に関する知識を証明する必要がある。エルサイードは「たとえ20年かかっても、自分が不当に扱われたことを証明するために待つつもりです」とコメントしている。

 同選手はパリ・オリンピックのあと、カフェで背後から女性を痴漢した疑いで警察に逮捕されたことが報じられたが、当局が事件の映像を検証し、容疑が晴れたようで直後に釈放されている

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Mohamed Ibrahim(@kesho_official)がシェアした投稿