2025.08.31NEW

【2025年全日本学生選手権・特集】宿敵を破って2連覇達成、目標を越えるのは今!…男子フリースタイル65kg級西内悠人(日体大)

(文=布施鋼治)

 いつになく猛暑が続いた2025年の夏だったが、全日本学生選手権大会も熱かった。大会最終日(8月24日)、最も熱い激闘を繰り広げたのは、男子フリースタイル65㎏級の決勝で顔を合わせた西内悠人(日体大)荻野海志(山梨学院大)だった。

 昨年のこの大会で初めて顔を合わせて以来、この1年で4度も闘っているライバル同士(西内の3勝1敗)。案の定、今回も期待に勝るとも劣らぬ激闘を繰り広げた末に4-0で西内が勝利を収め、大会2連覇を達成した。

▲昨年と同じ決勝の相手(荻野海志)を破り、2連覇を達成した西内悠人

 「前回と比べたら、フィジカルであったり、試合中の圧とか、そういうのが(荻野は)すごく強かったので、簡単には勝たしてはくれないと思いました。荻野選手からは(この階級で)ずっとやってきたっていうプライドみたいなものを感じました。何回か勝っているからといって、もう一回勝てるというわけではない。それがスポーツの世界ですからね

ガス欠を懸念して最後は消極的になることもあった過去

 敵は荻野だけではなく、自分の中にもあったという。試合後、西内は「今大会のテーマは自分の殻を破ることだった」と打ち明けた。

 「自分からタックルで点を取ることがなかなかできない時期もあった。今回は相手に点を取られてもいいから、自分からどんどんタックルに入ろうと思っていました」

 なぜ積極的なレスリングを意識したのか。それは今回、第2セコンドについてくれた同郷(高知県)で同階級の先輩、清岡幸大郎(カクシングループ=日体大外部コーチ)の存在が大きい。

 「今までの自分は、ガス欠を懸念して最後は消極的になってしまったりとか、攻め切れない部分があった。でも、同じ場所(日体大)でやってる清岡先輩の練習を見ると、そこはもう気にせず、『やられてもいいから、とにかく取る』という気持ちでやっている。その姿を目の当たりにして、『オリンピックチャンピオンと自分との違いはここだ』ということに気づかされた。だから今回はポイントを取られることを恐れないというか、自分の変なプライドをなくすことを意識して闘いました

▲セコンドには同階級で目標でもある清岡幸大郎コーチ(左から2人目)

 自分の殻を完全に打ち破れたかと聞くと、西内は自分を卵に入っている状態に例えた。「ようやく手が出たぐらい。足は完全に抜けていない。決勝ではタックルを取れなかったですからね。まだ心のどこかでポイントを取られることをビビってる自分がいる。もっと変えていけたらなと思います」

ずっと清岡の背中を追ってきたが、乗り越えるとき!

 現在の目標は2028年ロサンゼルス・オリンピックでのメダル獲得だが、そのためには同階級でいつも一緒に汗を流す清岡を倒さないといけない。

 「ジュニアのときからもう15年ぐらい、ずっと幸大郎さんの背中を追い続けてやっている。ちょっと前まで『この人には勝てないのではないか』という気持ちがよぎるときもあった。さすがに今はもうないですけどね。きっちりと乗り越えていかなければいけない問題だと思います」

 清岡だけではない。荻野はこれからも西内の前に立ちはだかってくるだろう。しかし、「荻野選手に勝つことを目的としてしまってはオリンピックへの道はない。そこはもう大前提として、世界で勝つというもっと上を見据えてやっていきたいと思います」ときっぱり。

 殻を完全に打ち破れ-。

▲荻野海志(左)もこのままでは終わるまい。多くの敵を相手にしてロサンゼルスま出の道を突っ走れるか