(文=布施鋼治)
再興から6年、南九州大から初のインカレ・チャンピオンが誕生した。しかも、2人-。女子68㎏級の持永聖愛と76㎏級の吉田千沙都だ。同57㎏級の長谷川姫花は準優勝だったので、計3人が決勝に進出した。
持永は「ウチの大学で今回のようにタイトルをバンバン獲ったのは初めて」と喜びを隠さず、「やっぱり周囲からの『今回はいける』という期待にこたえたかった。少なくても自分に関しては、そこが優勝した要因だと思います」と振り返る。
ヤマは初戦となった小原春佳(法大)との準決勝と振り返る。「小原選手とは去年のジュニアクイーンズカップで闘って、そのときはギリギリ勝った感じだったんです。自分より小柄だけど組み手がうまくて、体格的に下から入られると厳しい。今回も警戒していたけど、案の定、それでポイントを取られてしまいましたね(最後は7-6で競り勝つ)。反省です」
吉田に勝因を聞くと、「分からない」と、笑顔とともに首をかしげつつ、「先生を信じてやってきたから」と答えた。「だから思い切って攻めることができました」
吉田が全面的に信頼する先生とは、南九州大の竹田展大監督(専大卒)を指す。監督は選手たちの頑張りに相好を崩した。
「今回は本当に、すごく頑張ってくれた。自分の力とかではなく、インカレに向けて選手が自分たちで頑張ろうと盛り上がってくれたことが、2人も優勝者を出した原動力だと思います」
チームワークは、見るからにいい。誰かが試合になると、全員が率先して声を飛ばす。試合がないときには部員同士で楽しそうに会話していた。
持永は「高校(大阪・堺リベラル高)のとき、竹田先生がスカウトに来てくれたんですよ。高校時代の監督と話して、練習も見ずに断るのは失礼だからと、一度練習に行かせてもらいました。そのとき、とてもいい雰囲気を感じて楽しくレスリングをすることができました。もともと、わたしの一番のモットーは“楽しくレスリングができないと意味はない”。入学してみたら、やっぱり楽しかったです」と、入学時の経緯などを話した。
持永や吉田と同じ重量級で活躍していた松雪成葉コーチ(至学館大卒=全日本選手権3度優勝)は、2人の成長に目を細める。「持永は組み手がうまくなってきた。吉田は取るべきところで点数が取れるようになってきた感じがします」
竹田監督の南九州大の監督就任とともに、東京から後を追うように宮崎県にやってきた小此木仁之祐(宮崎・櫻美学園高)が、今月初めのU17世界選手権(ギリシャ)男子フリースタイル55㎏級で優勝した。竹田監督は小此木の世界一にも影響されたと見ている。
「それで、大学生の男子も女子も『次は俺たちの番だぜ』というムードになりましたからね。ふだん一緒に練習している高校生には負けたくない、という気持ちが、今回の活躍の原動力になったんだと思います」
高校生から勝利のタスキを大学生へ。次は男子大学生の番か。竹田監督は「秋のリーグ戦(12月)では、必ず二部リーグで優勝してもらう」と語気を強めた。