ブルガリア・サモコフで行われた2025年U20世界選手権に出場した女子チームが8月24日、羽田空港に帰国した。「金5・銅2」を獲得し、昨年の「金3・銀1・銅2」を上回る成績。国別対抗得点の1位も守った。
正田絢子コーチ(京都・丹後緑風高教)は「大会前からけがをしている選手もいましたが、ドクターやトレーナー、(他スタイルの)コーチの全員から支えていただきました。チームワークやコミュニケーションで乗り切り、最後までしっかり闘えました」と、“チーム・ジャパン”としての好成績と振り返る。やるべきことを最後までやった選手が多かったという。
ただ、試合途中で弱気になって逆転され、再逆転できなかったケースや、あのときにこう闘えば、というケースもあり、5階級制覇とはいえ“ダントツ”という内容ではなかったことも話す。「ちょっとしたことを、やり切るかどうかが勝敗の分かれ目」と話し、改善を求めた。
U17アジア選手権(6月)とU20アジア選手権(7月)の国別対抗得点で3位に終わっていただけに、流れを変える5階級制覇の団体優勝。「シニア世界選手権の代表が2人いて(尾西桜、内田颯夏)、本人達も『ここで勝たなければ次はない』といった気持ちで頑張ったと思います」と、リーダーの力が相乗効果になったと分析。来月の世界選手権での好成績を期待した。
齋藤ほのかコーチ(東京・安部学院高教)は、U17とU20のアジア選手権で団体優勝を逃したことで、「選手はプレッシャーがあったと思いますが、各自がしっかり闘ってくれました。負けた選手も、気持ちを切り替えてチームのために動いてくれました」と話し、正田コーチと同じくチームワークによる好成績を強調した。
男子フリースタイルは地元オリンピックに向けて米国の躍進がすごかったが、女子に関しては「さほどではなかった」とのこと。猛威をふるっていたインドも「対策をしっかり立てれば十分に闘える」と見ており、この世代では日本の総合力が一番だと感じたようだ。
昨年に続いて圧勝での優勝を飾った59kg級の尾西桜(日体大)は、来月のシニア世界選手権(クロアチア)に向けて最高の前哨戦となった。「一番の目標としているシニアの世界選手権へ向け、優勝は大前提。いい形でつなげたかったので、その部分でもよかったです」と、結果だけではなく内容にも満足度が高い。特にグラウンドはよかったそうだが、組み手など強化するべき点はあったと言う。
自信にはなったが、「シニアの舞台は、こんなに甘くないと思います」とも話す。大会まで3週間を切った中、「コーチとしっかり見直し、1から作り上げたい。エントリーも出たので、対策を練りながら練習していきたい」と言う。
「サクラ・オニシ」という名前も世界に広がったのか、外国選手・関係者からの激励メッセージも多く、現地でも多くに人から声をかけられたと言う。そうした応援で緊張するではなく、「力に変えて楽しむことができました」と、優勝の原動力を話した。
■50kg級優勝・小川凜佳(育英大)「2年前(U17世界選手権)に金メダルを取って、去年は予選で負けて世界選手権に行けず悔しい思いをしました。今回は、自分のやってきたことをしっかり出せた試合だったと思います。U17の世界
一に比べると、相手の力も強いし、やりにくい選手が多くいましたが、大学で練習してきたことを出せたかな、と思います。自分の展開が作れなかったり、取り切れない部分があったので、そこを直したいです。天皇杯(全日本選手権)優勝を目標に、これからも頑張っていきたい」
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■53kg級優勝・升田夏実(育英大)「おととし(U17世界選手権で)優勝できましたが、去年はアジア選手権も世界選手権も出ることができなかった。世界選手権に出られたことがうれしかったし、優勝できて最高にうれしいです。気持ちの浮き沈みが激しいのですが、世界選手権が近づくにつれ、優勝する、という気持ちをつくっていくことができ、よかったと思います。まだ取り切れない部分があったので、練習通りの処理をできるようにすることが今後の課題です。次は全日本選手権で入賞できるように頑張りたい」
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■65kg級優勝・北出桃子(至学館大)「2年ぶりの世界選手権(前回は7位)で優勝でき、本当によかったです。負けるかもしれない試合もありましたが、絶対に勝つ、という気持ちで闘ったので優勝できたのかな、と思います。決勝は7-0とリードしたあと逃げてしまい、追い詰められました(最後は9-5)。最後まで攻められなかったのが反省点です。全日本選手権の優勝を目指して頑張ります」
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■68kg級優勝・星野レイ(神奈川大)「優勝できたことにホッとしました。去年はけがで出場できなかった悔しさがあり、U20最後のこの大会は絶対に優勝する、という気持ちが強かったです。でも、2年前の方が圧倒して優勝しました。まだ負傷前の実力には戻っていません。周りの選手も強くなっています。足が止まったり、技をかける甘さがありました。次は全日本選手権に勝てるように頑張りたい」
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■55kg級3位・筒井双(福島・ふたば未来学園高)「今年からU20世代。優勝を目指していたので、3位は悔しいです。海外の選手は手足が長く、日本にはあまりいないレスリング・スタイルで、苦手意識をもってしまいました。(3位決定戦の選手はU23欧州チャンピオンで)自信にはなりましたので、頑張りたい。国内で負けない選手になり、海外でも活躍できる選手を目指します」
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■62kg級3位・竹元紫凜(育英大)「準決勝でひざをけがし、3位決定戦に出られるかどうか、という状況でした。トレーナーの方にしかりテーピングしてもらい、出ることができてよかったと思います。(ラスト2秒の逆転勝ちは)やるしかない、という気持ちでした。けがをしても、そうした粘りが出せたのは収穫で、今後の自信につながります。足首も痛めていて、最近けがが多いので、まずは、けがをしない体つくりをしたい」