2025年インターハイの個人対抗戦・男子決勝80kg級は、3月の全国高校選抜大会決勝と同じ顔合わせへ。そのとき、テクニカルスペリオリティで敗れた花盛奏太(兵庫・猪名川)が秋保大地(東京・文化学園大杉並)との大激戦を制し、リベンジして優勝。高校最後の夏で全国王者に輝いた。
チャレンジの応酬となった終盤だった。ラスト16秒、花盛の反り投げを秋保が押しつぶすような形となり、6-6となって秋保がラストポイントでリード。これで勝負が決まったかと思われたが、最後にもうひとつヤマが訪れた。
花盛の必死の攻撃を秋保が反り投げで返したところを、今度は花盛が覆いかぶさり2点をゲット(相手陣営のチャレンジ失敗で、さらに1点を追加)。9-6として終了のホイッスルを聞き、池畑耕造監督の元へ駆け寄った。
花盛は「選抜では相手のペースに合わせすぎて、何もできなかったんです」と、約4ヶ月前の完敗を振り返り、今回の試合で意識ししたことは「相手に合わせずに自分のペースで試合をすること」だった。それがうまくいき、一時はポイントでリードする展開となったが、ラスト16秒でリードされてしまった。
しかし、四つ組みからの投げ技で逆転を目指す練習も繰り返していたと言う。四つに組まれたことを嫌がった秋保が反り投げを狙ったところを押し倒して自らのポイントへ。「練習していたことが出せました。残りが16秒しかなくても、最後に取る自信はありました」ときっぱり言う。一番の要因は「優勝するために練習してきたことです。最後は気持ちでした。あの悔しさを晴らすために練習してきました」と感慨深げ。
全国大会の優勝は2022年全国中学選抜U15選手権以来で、高校入学後は初。「メンタル面が勝てなかった原因かもしれません。不安もあって…。でも、この大会に向けて、毎日優勝を考えて練習してきたので、それがよかったのだと思います」と振り返った。
表彰式では、家族から祖父の遺影が手渡され、それを持って写真に映った。「昨年亡くなりました。ずっと応援してくれていました。この優勝を見せたかったのですが、いい報告ができました」と言う。
池畑監督は「選抜のときに大差で負け、あのときから基礎体力からもう一度鍛え直しました。最後の最後は、頑張ってきた練習の成果だったと思います」と、その粘りをたたえた。ラスト16秒でリードされたときは、「あの場面で、一発仕掛けに行くことは想像できました」と話し、こうしたケースを想定した練習を十分に積んできたことを話した。
「仕掛けるべきだ」という気持ちがあっても、行動に移せるかどうかは別問題。それができるスタミナと最後の瞬発力が必要。「練習量と気持ちづくりを十分にやってきた」という日頃の練習があればこその逆転劇。「最後まで『勝つんだ!』という気持ちがあったことも大きかったと思います」と言う。
花盛は「これで天狗になってはいけない。国民スポーツ大会へ向けて、1から頑張っていきたい」と謙虚に話し、飛躍を誓った。