2025.08.04NEW

【2025年インターハイ・特集】反省と練習の成果が入り混じった2連覇達成…女子76kg級・藤田真妃琉(群馬・前橋育英)

 昨年、4人の1年生チャンピオンが誕生したインターハイ女子個人対抗戦。その中で、今年も勝ったのは76kg級の藤田真妃琉(群馬・前橋育英)のみ。けがで不出場の選手もいたが、勝負の世界の厳しさを感じさせる結果となった。

 藤田は「練習してきたことが出せなかった面もあるけど、やるべきことをやって勝つことができ、うれしいです」と振り返る。確かに、初日の2試合は、無失点のフォール勝ちとテクニカルスペリオリティ勝ちで、圧勝での優勝を感じさせたが、決勝の高山美優(愛知・至学館=ジュニアクイーンズカップU17-73kg級優勝)との一戦は、勝利がどちらに転んでもおかしくない接戦。

 終盤、2-0からタックルを受けてしまい、あわや2失点という状況をこらえ切れなければ、2-2のラストポイントによって負けとなる状況。こうした状況になってしまったことは、練習で培ったものを出せなかった展開だった。藤田の粘りが上回り、体勢を入れ替えてポイントにつなげ、ここで勝利が確定的となったが、薄氷を踏むような勝利だった。

▲(左写真から)終盤、高山のタックルを受けピンチを迎えた藤田だが、体を入れ替えて自分のポイントへ

 一方で、「接戦で終盤にもつれ、勝ち抜く練習をずっとやってきました」と話し、相手のミスや詰めの甘さによる勝利ではなく、この部分は練習の成果だったことを強調。「自然と体が動きました」と振り返った。

「クラッチを離したら、みんなへの思いが無駄になる」

 他にも、高山に入られて守りに入るシーンは何度かあった。いずれも決定的な攻撃を許さず、相手の脚などをかかえたクラッチを離すことなくキープ(こう着)を続けてブレークへ持ち込んだ。「(クラッチを)離したら、今まで練習を見てくれた先生、応援に来てくれた家族、練習相手の先輩・後輩、みんなへの思いが無駄になる」との思いで、必死にこらえた勝利だったと言う。

▲クラッチをはずしたら2失点…。藤田は粘り、失点を阻止したことが2度あった

 クラッチを離さないパワーは、プロレスラーの父(藤田和之)の遺伝なのかもしれず、さらに伸ばしていく長だろうが、何度もピンチの体勢になったことは改善すべき点だろう。外国選手のパワーなら切られて失点したかもしれない。本人も、「これまでの上のカテゴリー(U20)での試合では、あのケースでは取られていました」と振り返る。脚をさわらせない防御力が必要。このままの闘いでは駄目だ、ということは理解している。

 反省と練習の成果の両方が入り混じった2連覇達成だった。

世界選手権代表選手と連日の練習

 練習は育英大でやっているので、68kg級で世界選手権代表となった石井亜海(クリナップ)も練習相手の一人。日本のトップ選手と毎日練習しているので、「最後まで、絶対に負けるわけがない、という気持ちでした」とも言う。

 4月のジュニアクイーンズカップは、U17ではなくU20に挑戦した。「自分の力を試したくて…」との挑戦だったが、結果は吉田千沙都(南九州大)にフォール負け。壁の高さを感じた。

 この大会の優勝によって12月の全日本選手権の出場資格を得たので(注=昨年は年齢によって出場できず)、吉田へのリベンジの機会とシニアへの初挑戦が待っている。「もっとパワーアップして頑張りたい」と話し、ワンランク上での闘いに向かう。

▲2連覇を決め、観客席の父(右写真)に勝利の報告