兵庫県は、オリンピック選手として2016年リオデジャネイロ大会の井上智裕(育英高~日体大卒、当時三恵海運)を輩出。最近でも赤木烈王(猪名川高)がインターハイほかで全国王者に輝き、U17アジア選手権も制しているが、競技人口は減少中。全国高体連への登録選手数で、男子の38選手は多い方ではない(女子の14選手は全国で2番目)。
レスリング部のある高校は6校あるものの、学校対抗戦が組めるのは猪名川と神戸高塚の2校のみ。選手数を増やすのが県を挙げての課題だ。一貫強化ができ、キッズ選手がそのまま中学、高校でレスリングを続けてくれるのが理想で、選手を引きつけるだけの努力は必要。一方、高校入学後にレスリングを始めてくれる選手を探すのも大切なこと。
藤田監督も毎年春には新入生を相手に選手募集を行う予定だ。まず練習を見に来てもらい、できれば体験してもらうことを挙げる。今年のインターハイに出場する2人のうちの1人は、中学時代まで卓球の選手。2年半あれば、全国王者は厳しくとも、全国大会出場を果たすことはできる。
来春に卒業する3年生の3人は、すでに大学でレスリングを続けることを決めており、進学先も決まりつつあるが、そのうちの1人は高校入学後にレスリングを始めた選手。キッズ・レスリングの経験者を集めて育ててることがすべてではない。
中学で部活動の外部委託の動きが進んでおり、その流れはいずれ高校に来ることが予想される。その波に合わせ、学校の枠を超えての練習参加の方法も模索中。2023年全日本選手権・男子グレコローマン77kg級優勝の堀北一咲望(現宮崎県スポーツ協会)は、通っていた西宮香風高校にレスリング部がなかったため、六甲アイランド高校の練習に加わって実力をつけた選手。こうした体制の確立も必要となってくるだろう。
兵庫県は、野球、サッカーではプロチームがあり、ゴルフ場も多く、ラグビーも盛ん。レスリングが台頭することは厳しい状況と言えるかもしれないが、一歩ずつ進めば道は開ける。
藤田監督にとって、就任2年目の今年は、どんな選手でもていねいに育て、大学へ行ってもレスリングを続けたいという選手がいれば、希望をかなえられるよう努力する段階。選手集めを含めて地道な指導を続け、猪名川とともに全国へ飛躍する選手・チームに成長することが期待される。
■インターハイ51kg級に出場する米澤太朗副主将「レスリングは幼稚園から、ここ(神戸高塚クラブ)でやっています。レスリングは、勝ったり負けたりする中で自分の成長を感じられるところがいいです。これまでの最高の成績は去年の全国高校生グレコローマン選手権のベスト8。今年は近畿大会で3位でしたが、インターハイではもっと自信をもって攻撃し、優勝することが目標です。全国高校生グレコローマン選手権、国民スポーツ大会にも出ることが決まったので、すべて頑張りたいと思います。
藤田先生はテクニックがすごく、今まで知らなかった技や、その選手に合う技を教えていただいています。卒業後も関東の大学でレスリングを続ける予定です。行く予定の大学の練習に加わらせてもらいましたが、とてもいい雰囲気でした」
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■女子マネジャー・森岡望来さん(3年生)「入学直後はバレーボール部に入っていました。練習場との往復のときにレスリング場が見え、みんな一生懸命にやっている姿が目にとまりました。元々、運動部のマネジャー希望でした。誘われて、選手としてバレー部に入ったのですが、周囲との実力差もあってやめ、レスリング部のマネジャーをやらせてもらうことにしました。友達が遊びに行くときも練習に来ないとならないので、ちょっとしんどかったです。でも、試合で選手が勝ったときは、すごく感動するので、やってよかったと思います。
選手の苦労を見ていると、優勝してほしい、という気持ちになります。(女子を引き入れようと思ったことは)なかったです。日本の女子は強いことを知っていますけど…。大学へ行って、今度は選手としてバレーボールをやろうと思っています。でも、(同期の)3人が大学でもレスリングを続けるので、引き続き応援していこうと思います」